白の祓魔師
「大天使が白の祓魔師を守護された。聖祓魔師(エクソルチスタ)様の誕生である」
興奮に震える声が、教皇の口から零れ出た。
二人は思わず声のした方へと顔を向けた。
すると、教皇が膝を折り、胸の前で祈りの形に指を組み合わせて拝まんばかりの表情をして二人を見上げている。
「大天使の守護を受けし祓魔師は、全ての祓魔師の頂点に立つべき聖祓魔師(エクソルチスタ)。今ここに、伝説と思われていた祓魔師が存在した。聖祓魔師(エクソルチスタ)の誕生にまみえる事が出来るとは、なんと僥倖な事か!」
教皇の声は歓喜ゆえに次第に高まり、最後には叫ばんばかりになった。
「ちっ、違い―」
『吾は座天使。この者を守護する者なり』
アムロの否定の言葉を遮るように、毅然とした美声が厳かに言葉を綴った。
そして続いた言葉は、一部の聖職者達に恐怖を与えた。
『神の僕よ。正しき事を唱え、そして行え。悪しき心を持ちし者どもは、聖なる剱により罰を受けよ』
白い優美な指が聖堂内の聖職者たちへと向けられた途端に、幾人かの枢機卿や司祭、修道士達に異変が現れた。
喉を掻き毟って呻く者
腕が末端から腐り落ち始める者
股間を押さえて悶絶する者
『嘘・偽りを労せし者はその声を。己が懐に富を流し込みし者はその腕を。姦淫を働きし者はその楔を。悪しき事をせし者に神の裁きが下った。心せよ、神の僕。代弁者らよ。神はいつでもそなたたちを見つめている』
天使と見紛う姿は、その言葉を残して光の中に薄らいでいった。
教皇を始めとした聖職者たちが、一同にその姿に神を讃える聖典を述べる。
大聖堂は神の御技と奇跡をまえに、歓喜に包まれていた。