白の祓魔師
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「聖人にして白の聖祓魔師(エクソルチスタ)。アムロ・レイ殿。今この時より、貴方様は祓魔師達の頂点に立たれるお方だ。我等を正しき道へと導きたまえ」
紺色のキャソックに黒のストラをかけたデギン・ザビがアムロの前に片膝を折る。
それに続いて赤いストラをかけたジョニー・ライデンと青のストラを受け取ったカミーユが随った。
「僕はそんなにたいした人間じゃありません。まだまだ、皆さんに教えを請わねばならない立場です。どうぞお立ち下さい」
アムロは慌ててデギン・ザビに手を差し伸べる。
すると、その手を恭しく戴き、その甲に額を押し当てて老人は歓喜の涙を流した。
「まことに心優しきお方だ。その清いお心と悪魔の皇帝ですら恐れぬ意志の強さこそが、熾天使ミカエルの剱を持つにふさわしい聖祓魔師(エクソルチスタ)であられる」
「いえ・・・・・・。僕ごときがミカエル様の剱を使うなど、おこがましいと・・・」
「何を言ってるんだよ。さっきベルゼブブを切り裂いたのは確かにミカエル様の剱だった。君もあの力を放つ時に、そう言ってた筈だ」
「そ、そんな・・・。僕、そんな事を言いましたか? カミーユ先輩」
「青の祓魔師と呼んで欲しいな」
「貴方は間違いなく、熾天使ミカエル様の一部でありましょう」
戸惑うアムロに、教皇が声をかけてきたのはその時だった。
「何故、そんな事が言い切れるんですか?」
生まれた時から聖人と称されて来たが、自分にはその聖別の仕方が理解出来ない。自分は普通の、弱くて卑怯な心も持つただの人間に過ぎないと思ってきたアムロにとって、その確信に満ちた言葉が解らない。
「貴方の右肩に菱形の様な痣がおありでしょう。生まれた時から」
「ええ」
「それは、創世記戦争のときに双子の兄であるルシフェルとの一騎打ちの時に、彼の剣が貫いた痕だと言われている、所謂、聖痕(スティグマ)です。そして、先程もお話致しました。生誕時の祝福の鐘。更には、悪魔を追い遣ったあの光の強さと美しさ。それを発する事が出来るのはミカエル様をおいて他にはありません。貴方以上に白の聖祓魔師(エクソルチスタ)に相応しい人物はこの世の中に居ないと言えましょう」
教皇はそう告げると、自分の下げていた純白のストラを外すと、アムロの首へとかけた。
そして、頭に載せていたミトラと肩に羽織っていたローブも外すと、アムロへ同じように着け直した。
「白の聖祓魔師(エクソルチスタ)アムロ・レイ殿。心弱き我等使徒を守り、正しき道へと導く標となりたまえ」
教皇の声が聖堂内に響き渡ると同時に、鐘がリ〜ン ゴ〜ンと鳴り響きだす。
それは、アムロが白の聖祓魔師(エクソルチスタ)として聖別された瞬間であった。
2012/03/12