二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

白の祓魔師

INDEX|3ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

出会い編



俺が産まれた時
世界中の教会の鐘という鐘が、一斉に鳴り響いたという。
その音は祝福を約束するかのように、美しく軽やかに響いたそうだ。
聖職者達は、世界中で調査を始め、最終的に俺の存在へと辿り着いた。
そして、法王自らがこう述べたそうだ。

― この子は天の大いなる祝福を受け、人の世に神の御業を知らしめるべく天よりつかわされた聖人である ― と・・・

“僕と同じ時間にこの世に生れ落ちた赤ん坊が、世界中でどれだけ居ると思っているんだ? その中から、どうやって僕が、その対象だと決定できるんだよ”

俺は物心ついた頃にそんな疑問を抱いた。
だって、俺は、教会が敬うほどの清い心の持ち主じゃなかったんだから・・・。
そりゃ、反社会的な行為はしないし、モラルは当然の事ながら守っている。でも、食べたいものは食べたいし、欲しいものは出来るだけ手にしたい。親の愛情は独占したいし、周囲から誉めそやされたい。嫌いな奴だって居るし、どうにも馬の合わない相手だっている。そんな俺が、教会が認める聖人扱いなんておかしいじゃないか。
そう思って、教区の助祭であるブライトさんに疑問をぶつけたのは、俺が十歳になった頃だった。

             †

「そんな風に、自分を客観的にみれる十歳児なんていやしないぞ? アムロ」
俺の頭を撫ぜながら、ブライトさんはそう言ってくれた。
「でもさ、僕はどう見たって普通の人だよ? 崇め奉られるような聖人君主じゃない。・・・・・・なのに、何で・・・」
「聖人だ・・・って?」
「・・・うん・・・」
俺は俯いてしまっていた。
「だって、変じゃないか。世界中に僕と同じ誕生日の人が、どれだけ居ると思うの? 間違いなんじゃ・・・ないかな」
「アムロは、どうして聖人だと言われる事に、抵抗感があるのかな」
ブライトさんは信者の席に座る俺の前に膝を付いて、下から見上げるようにして訊ねてきた。
「・・・・・・だって・・・・・・」
「聖人だと言われるのに、それに見合う程の人格者じゃない。そう自分を評価しているから・・・かな?」
「・・・だって、そう・・・でしょ?」
俺はむくれたような顔でブライトさんを見つめた。すると、彼は破顔して俺の頭をガシガシと撫でてきた。癖毛の俺の髪は、鳥の巣のように絡まってしまった。
「イタッ! イタタッ! 痛いってば!!」
俺はブライトさんの手を払いのけると、涙目になって睨み付けた。
「酷いよ! ブライトさん」
俺は無体な扱いに怒ったのに、ブライトさんは一向に気にしていないどころか、満面の笑みを浮かべていた。
「アムロはいい子だな」
「何処がだよ!!」
「そうやって、自分の醜いところをしっかりと認識している所がいい子だと思うんだ」
「だって、事実でしょ?」
「いいや。普通の子供は自分の良い所ばかりを大人に見せようとするし、アピールする。子供は天使だなんて嘘さ。天真爛漫に振舞っていても、その底には打算だってあるし、それを認めようだなんてしやしない。だが、アムロはそれをする。素晴らしい資質だと思うよ」
「だから聖人だって?」
「充分そう思えるけどな。まぁ、アムロがそう思われるのが負担なら、自分だけは普通の人だって思っていればいい。自分の思ったように振舞えばいい。例えお前が普通に振舞ったとしても、教会は聖人であるという認識を改めないと思うがね」

『そうだ。貴様はバチカンが認めた聖人。より強い祓魔の力に目覚める前に、神の元へ帰って貰おう』

建物の何処かから、低い男の声が響いたのはその時だった。

「何者だ!!」
ブライトさんが俺を抱き寄せると、見た事も無いほど怖い顔をして周囲を見回した。すると、正面の十字架の上に人影があった。
「ブライトさん!? あれ・・・」
俺がその人影に気づいて教えると、俺の身体はその人影から隠されるようにされた。
『ほほぅ? 一人だけで我に立ち向かえるとでも?』
嘲るような声が上から投げかけられた時、複数の足音が近づいてきた。
「「「ブライト!!」」」

教会の入り口や司祭館との通路から司祭と助祭の数人が駆け込んできた。そして、やはり現れている人影に一瞬にして緊張を顕わにした。
「何者だ? あやつは」
パオロ司祭がブライトさんに問いかけたが、応えられるわけがない。
「解りません。いきなり現れ、アムロを神の元に戻すと不隠な事を・・・」
「なんだって!?」
「司祭様方は、どうして」
「教会内に邪悪なものが現れたと感じたのだ。それで・・・」
「アムロ! こっちへ!!」
大きな腹を揺らしながら、リュウ助祭が俺を人影から遠ざけようとした。
その声に従おうとした俺の前に、突如として黒衣の男が立ち塞がる。
「「「「「アムロ!!」」」」」
『この者以外は邪魔だ。消えうせろ』

黒衣の腕がおもむろに持ち上がり、手掌から何かが溢れ出してきた。

“いけない!!”

俺は瞬間的にそう感じ、男の腕に飛びついた。
一瞬、男の身体が揺らいだが、すぐに平静を取り戻したらしい。
『ほぉ〜。皆を庇い、真っ先に己が神の元に素直に帰るか。・・・それも良かろう』
溢れ出していたものが俺の身体を握りつぶすかのように締め付けてきた。
「ぐっ! あぁぁ〜」
「「「「「アムロ!!」」」」」
周囲にいた皆が必死になり聖典を唱え、聖水を振りかけていたが、黒衣の男は蚊ほども感じていないようだった。
体格に勝るリュウさんが体当たりを食らわせようとしたが、男の直前で跳ね返されている。

ミシッ!
俺の身体から不気味な音が発せられた。

「ぁ・・・ぁ・・・ぁ・・・」
俺は仰け反って身体を締め上げてくる力に飲み込まれるしかない。
『さあ、そのままエデンへ戻るがいい』
締め付ける力がより強まり、俺は目の前が真紅になった。
「うわぁぁ〜」

ベキッ!バキンッ!ゴキッ!!
ガハッ!

身体のあちこちの骨が締め付ける力に耐え切れずに折れだし、俺は血を吐いた。

“もう・・・これまで・・・か”

俺が諦めかけた時だった。
作品名:白の祓魔師 作家名:まお