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大佐の新しい二つ名

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「セントラルには、ないな。ここの錬成陣は私が壊すまでもないから、手を出していない。」
「ならば、今から錬成するというのは?」
「どういう意味だ?」
「錬成陣を破壊するのではなく、ただ単に龍脈を復活させるために記憶の錬金術を行って欲しいと言っている。」
「・・・簡単に言うが、記憶の錬金術は疲れるんだぞ。私は記憶の錬金術と魂の入れ替えの錬金術、2つを1日に行うなんてこと出来ない。」
「では・・・弟子がすればいい。」
「弟子?・・・アルがか。」
「そうだ。一通り、教えたのだろう?」
「・・・手順は教えた。ただ、実地はまだだ。」
「そろそろテストをしてみてはどうだ?アルフォンス、出来るだろう?」
私とナギに見つめられて、少し青い顔をしたアル(大佐の姿)が、緊張した面持ちで頷く。
「出来るかどうかわかりませんケド・・・やってみます。」
「まだ、ちょっと早いとは思うんだが・・・」
少し不安そうなナギをよそに、場所の選定に入る。
人目につかず、何かあっても問題とならない場所・・・
「ここに向かおう。」
私は、大総統府の裏手にある空き地を示した。

―――――
「アル、無理なら無理って言えよ・・・顔色がよくない。」
「心配しなくても大丈夫だよ、に・・・エド」
「いいよ、もう『兄さん』で。大佐もずっと『鋼の』言ってるし。慣れたくないけど、なんか慣れた。」
「ありがとう、兄さん。確かに会議とか出て疲れてはいるケド、いつかやらないといけないことだから、今やる。そしたら魂の入れ替えもココで出来るし。」
安心してもらうためにも笑顔で言ったら・・・微妙に視線を逸らされた。
やっぱり、まだ僕が大佐の姿だと、違和感あるのかな。
「・・・分かった。じゃ、あっちで見てる。」

錬成陣の外に兄さん、ナギさん、大佐(アルの姿)が見える。
大丈夫、手順は全て教わった。
気を読むのは苦手だけれど・・・未だに龍気はサッパリわからないし。
それでもかすかな大地の気を読み・・・記憶の糸口を掴む。
錬成陣に両手を着く。

直後、地響きがした。

「・・・すごい音がしたな。よっと・・・」
ナギが地面に穴を開けた。途端、一角が崩れ、地面が落下する・・・落下?
「おぉ、これは見事に地下道が出来てる。」
「地下道!?」
慌てて地面が落下したところを見れば・・・確かに地下道がそこにあった。・・・これ、第5研究所と大総統府をつなぐ地下道じゃないか?
「・・・この地下道は、先日、壊したハズだが。」
アルの姿の大佐が言う。気のせいではなく、口元がヒクヒクしている。
「だから、今の錬成で復活したんだろう。」
対して、ナギはのんびりと答える。
「せっかく壊した地下道を蘇らせてどうするっ!?」
「まぁまぁ、錬成は成功したんだ。ただ、昔じゃなくって、ここ最近の記憶で錬成しただけだ。遡るのは結構難しいし、神経を使う。初めてならこんなものだろう。」
「甘いっ!!こんなことでは国土・・・」
「こんなとこで何言おうとしてるんだ、大佐?」
ナギの鋭い眼光に、大佐(アルの姿)が一瞬ひるむ。
「ぐ・・・アレを壊すことなんて出来るのか?」
「大丈夫だ、あとは遡るときの手順を細かく注意すれば出来るようになる。」
「・・・一刻も早くマスターしろ。そして、魂の入れ替えの錬成陣も早く習ってくれなければ、いつまでもこのままでは困る。」
「何を焦っているんだか・・・」
「当たり前だっ・・・こんな状況にいつまでも甘んじていられるか。」
「はーっ、何事にも意味があるものだよ、大佐。」
「?意味が分からないんだが・・・」
「いずれ分かるさ・・・アル、どうした・・・?」
ナギが、いつまでも錬成陣の前から立ち上がらないアル(体は大佐)に声をかける。
が、返事がない。
「あぁ、しまった!!」
「ナギ?」
アルに近寄ろうとしていたエドが不審気に見る。
「本来の体でないときに、無理な錬金術をすると、体と魂に負担がかかるんだった。」
「そういうことは早く言えっ!!」
エドはアルに急いで近寄る。
「おい、アル・・・」
アルは俯いたまま荒い息をして、苦しそうに胸を抑えていた。
大丈夫かと肩に手を乗せたら、そのまま地面に崩れ落ちた。
「アルっ!?」
慌てて抱き起こす。大佐がどうこう言っている場合じゃない、スゴい熱だ。
こんな体で錬成したのか、このバカは・・・
「ナギっ!!」
「そう、怒るな、エドワード。魂の入れ替えなんて滅多にないから、注意事項をうっかり忘れていただけだ。」
「うっかり忘れるなっ!!そんな大事なことっ!!」
「ま、とりあえず、早く元に戻らんと・・・魂が疲弊するな。」
「な、なんだとぉぉーーっ!!」
なんだか夢うつつに兄さんがナギさんに怒っている声が聞こえて・・・そこで意識が途切れた。

――――
気がついたら、白い天井にカーテン、消毒液の匂い・・・病室だった。
「気づいたか、アル」
「うん、兄さん・・・あれ、僕戻ってる?!」
「あぁ、気を失ったお前を、こないだ錬成した龍気がある場所まで運んで、夜明けに術を行った。
ナギがすまないって。ムリなテストをさせて。
それから、魂が入れ替わって本来の体じゃないときは、錬金術禁止な。」
「そうか・・・僕、記憶の錬金術をして・・・そこで倒れたんだっけ。」
「魂と体が本来の姿じゃないとき、錬金術は相当負担になるらしい。これからは注意しろよ。」
「分かった。」

隣のベッドには・・・大佐が寝ていた。
あれ?大佐も体が・・・て、そうだ、僕がさっき大佐の体だったから、大佐の体もムリをしたんだ。

「あの、大佐・・・ゴメンなさい。」
「何を謝る。」
「え~っと、僕が大佐の体でムリをしたからこんなことに・・・」
「ムリをさせたのは私だ。謝る必要はない・・・いや、違うな。私の方こそ悪かった。」

「・・・おい、アル、お前アルだよな。まだ入れ替わったまま、なんてことないよな。」
「うん、・・・僕は僕だけど。」

「何が言いたい、二人とも」
「「大佐が素直に謝ったっ!?」」
「ありえない、絶っ対ありえないっ、これは夢か?」
「鋼の・・・前々から聞こうと思っていたのだが、キミは私をなんだと思っているんだ。」
「雨の日無能の腹黒大佐。」
「ほう・・・今日は晴れているが。無能かどうか試してみるか、身をもって。」
「発火布を付けて、バチバチ顔の前で鳴らすのは、顔が凶悪に見えるからヤメた方がいいぞ。」
「させているのは、鋼のだろうがっ」
ため息をついて、発火布の腕を下げる。
それにしても、魂が元に戻ったときの体の状態には驚いた。
ナギが「神経を使う」と言っていたが、これほどとは・・・目眩、関節痛、異常に早い動悸・・・まるで神経毒でも注入されたような症状だった。
いくら本来の体ではなく、無理をした反動だとしても、それを差し引いても、記憶の錬金術は相当、体力も神経もすり減らすものなのだということを身をもって痛感した。
そういえば、ナギも疲れたとよく言っていた。彼が言うとハボック並みに軽く聞こえるのだが・・・本当に疲れるものだったのだな。
作品名:大佐の新しい二つ名 作家名:海人