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ここで生きていく

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 「シャンデラ、サイコキネシスです!」

 声が聞こえた。目の前のミルホッグが倒れ、他のポケモンたちは宙に浮いている。浮いていないのは人間と、銀色の蟻のようなポケモンだった。シャンデリアのようなポケモンは黒い恰好の男性の横で浮いており、白と黒の二人がプラズマ団たちを見まわす。
 「このバトルサブウェイ、暴力行為は禁止とさせております」
 黒い恰好の男性はプラズマ団に言う。
 「ああ、名乗り遅れました。わたくし、このバトルサブウェイのサブウェイマスター、ノボリ。こちらはクダリと申します」
 懇切丁寧に彼は言うと、頭を下げる。
 「でも、このバトルサブウェイで問題起こす人はお客様じゃない! だから、帰ってもらうよ!」
 白い方、クダリは元気に言い放つと、プラズマ団たちに笑顔を見せた。いつも笑っている彼であるがこの状況の笑顔はいつもの笑顔と意味が違うように感じられる。
 「指さし確認準備OK!」
 「目指すは勝利、と申したいところですが本日は違います」
 「目指す場所はなし。君らの行先はただ一つ」
 「地上に行けるように努力してくださいませ」
 クダリは親指を下に向け、ノボリは中指を上に向ける。まるでチンピラのように。
 それから先のバトルは、トウコは一切介入などできなかった。様々な地方、様々な廃人を見たトウコだが、心が震えた。美しいシャンデラの炎と、アイアントの攻撃がプラズマ団を倒していく。トウコはそこに介入など、できなかったし、したくなかった。
 今まで見た廃人は『倒す』のが目的だった。
 だけど彼らは『魅せる』のが目的だと感じられた。ポケモンバトルが強いからサブウェイマスターなのではなく、ポケモンバトルを『楽しませる』のが彼らの仕事なのだ。
 強くなければ上には立てぬが、楽しむことを忘れては本末転倒。その証拠に、二人は楽しそうだった。
 「シャンデラ!」
 「アイアント!」
 二人が同時に指示を出し、ポケモンはそれを分かっているかのように攻撃を出した。それは信頼関係の成せる技。
 「私、必要なかったね、みんな」
 袋を降ろし、トレーナーたちのロープをナイフで切って行く。ナイフを持っているのは、人を傷つけるためではなく『食べ物をとる』『食べ物を切る』為なのだが、変な所で役に立っているようだ。
 「さて、次の街にでも行こうか」
 プラズマ団、彼らが狙うのはライモンだけではないだろう。各地で行動を起こしている。それを止めることはできないけれど、巻き込まれないようにすることは可能だ。
 「――貴女をこのライモンから出すことはできませんね」
 声からして黒い男性だった。
 振り向けば、冷たい瞳をトウコに向けている。トレーナーたちは解放され、身体を回していて、自由にしているが、黒い男性はそんな様子を見もせず、ただトウコを見つめている。背の高い男性に見られ、トウコは唾を飲み込んで彼を見上げる。
 「あの時の石、痛かったです」
 「あ! あなた、まさか……!」
 そう言えば石をぶつけてしまった人も、黒い服を着ていた。黒い服なんて珍しいことではないので忘れてしまっていたが。見てみれば、彼は帽子をひらひらと揺らす。自分の帽子ではなく、桃色の帽子を。
 「私の帽子!」
 「返してほしいなら、お願いを聞いてください」
 ノボリは石をぶつけられたことを怒っていない。最初は苛々したが、痛みが無くなれば怒りもなくなる。ただノボリが気になったのは、この地方ではいない筈の鳥ポケモンを彼女は持っていた。バトルサブウェイは様々な地方のポケモンを見るが、あの鳥ポケモンは見たことが無く、興味があった。
 そして彼女が『アスラトレーナー』なのだとすれば、この地方のポケモン以外を持っていると思われる。この地下鉄で過ごしていれば、ほかの地方に行く余裕もなく、出逢うのは廃人たちのポケモンのみ。刺激はあるが、トレーナーとして、見たことが無いポケモンとの出会いは心躍る。
 「バトルをしてください」
 その言葉に、トウコは頷くしかない。


3.信頼しよう君と共に


出すポケモンは5体、場所はこのホームでの特別なバトル。運良くもここは天井が高く、鳥ポケモンでも闘える。元々このバトルサブウェイは、ホームで闘う事を考慮して作られたのだが、ホームで闘っている時に一般人を巻き込んでしまったことから、トレイン内で闘う事を考案され、今に至るのだ。
 「ダストダス、行ってください!」
 「んじゃ、マグカルゴ!」
 第一戦目はダストダスVSマグカルゴ。
 一度出したポケモンは二回出すことはできず、勝利数の多い方が勝者となる。審判はジャッジが行ってくれることになったが、彼の目は爛々と輝いている。ここのマスターのポケモン、バトルを近くで観られるなんてめったにないことだろうから気持ちは分かる。
 「ダストダス、ダストシュート!」
 「マグカルゴを甘く見るなよ! まもる!」
 見た目からしてダストダスは毒タイプ。それに対してマグカルゴは炎、岩。お互いに相性は悪くないが良くもない。トウコの手持ちを彼は知っているわけでは無いが、トウコも同じく彼の手持ちが何なのか知ることはできない。
 「ダストダス、すかさずロックブラスト!」
 「あぶなっ! マグカルゴ、ふんえん!」
 マグカルゴは炎タイプであり、岩の攻撃は二倍になる。急いでふんえんで岩を防いだが、少しだけ当たってしまったようだ。毒タイプだからって岩の攻撃がこない、とは限らない。実際にマグカルゴも草であるソーラービームを覚えられるし、ジャイロボールも覚えられる。それをトウコが覚えさせていないだけで。
 「予想外、という顔をしておりますね」
 「毒タイプなのに岩とは、ね。だけどこっちも負けていられないからね! じならし!」
 じならしは地面タイプの技で相手の素早さを下げる効果を持っている。
 「く、ダストダス、もう一度ダストシュート!」
 「マグカルゴ、みがわり」
 みがわり、じならし、ふんえん、まもる。トウコのマグカルゴの技は特定されたのに、ノボリの方はダストシュートとロックブラストしか分かっていない。
 ダストシュートで身代わりが消え、トウコのマグカルゴはそれなりのダメージを受けているが、ダストダスはまだ余裕に見える。
 「……このままではいけませんね。ダストダス!」
 「マグカルゴ、まも」
 ダストダスの身体が光ったのを見てトウコは指示を出そうとしたが、間に合わなかった。きゅいん、と変な音がした後に、ダストダスの光が霧散する。
 ――だいばくはつ
 岩の混ざっているマグカルゴを倒したいが、マグカルゴはまもるとみがわりを覚えていて、少々面倒だと判断したのだろう。
 「申し訳ございません、ダストダス」
 そう呟いているノボリの声が聞こえたが、マグカルゴも倒れていた。
 両者KO、つまり、引き分けだ。
 「さぁ、次のポケモンを出してくださいませ。行きなさい、イワパレス!」
 「……っち。キレイハナ!」
 相性としてはノボリのイワパレスが有利だが、それを分かってトウコはキレイハナを出した。出されて嬉しかったのか、キレイハナはくるくると踊っている。
 「おや、草タイプで宜しいのですか?」
作品名:ここで生きていく 作家名:津波