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ここで生きていく

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 「私のキレイハナがストレート負けすると思っているなら間違いだからな」
 ギッと睨み付けながらトウコはキレイハナに指示を飛ばした。
 「キレイハナ、くさむすび!」
 体重が重い程威力が上がる技、くさむすび。体重は200㎏。虫系が入ってるとは言え、その威力は高かった。くさむすびで倒れたイワパレスに、キレイハナはすかさず攻撃をぶつける。
 リーフストーム。相手の特攻が二段階下がる技だ。
 「イワパレス、耐えなさい!」
 「無理だよ! キレイハナ、トドメだ! ギガドレイン!」
 二戦目は、トウコのストレート勝ち、である。イワパレスは何もできずに目を回して倒れた。成績は1-0-1。トウコの有利、と言ったところだろうが、まだ二戦目。残りは三試合残っている。ノボリは唾を飲み込み、三体目、ギギギアルだ。
 見た目からして、鋼タイプだろう。
 「じゃあこっちも! ムクホーク頼むよ!」
 ノボリが見た鳥ポケモン、ムクホークが声を出して飛び回った。
 「……待っていましたよその子を!」
 ノボリはぞくぞくとするのを感じる。あの時見た時から、近くで見たいと思っていたのだ。やはりこちらでは見ない子で、その姿は凛々しく猛々しい。こちらに生息する鳥ポケモンが悪いとは言わないし、好きではあるが、この『ムクホーク』と呼ばれた子を見てみたかったのだ。
 「ふぅん」
 「そして、この子を倒したいと、思っていたのです!」
 ノボリはそう言うと、ギギギアルに声を出さず、指を向けた。それだけで理解したのかギギギアルがムクホークに向かって浮かぶ。どうやらギギギアル、というポケモンは浮かぶことができるポケモンのようだ。基本的には地面なのだろうが。
 「ムクホーク、引きつけ――今だ!」
 つばめがえし。効果抜群とは言わないが、距離を取るのは成功したようだ。つばめがえしの勢いでギギギアルの背後を取ると、ムクホークはさらに翼で打ってギギギアルを吹っ飛ばすが、あまり効いていない。
 「まだ、まだだ!」
 トウコはムクホークを見上げる。ノボリも同じようにギギギアルを見上げていた。
 鳥と鋼の『空中戦』なんて中々見れるものではない。
 「ギギギアル、ロックオンです!」
 ギギギアルじゃなくても、ロックオンをされれば次に来る攻撃はある程度予想ができる。トウコは覚悟を決める。
 「――――ムクホーク! 今だ! インファイト!」
 「ギギギアル、でんじほうです!」
 ムクホークのインファイトとギギギアルのでんじほうがぶつかり合う。だが、結果は、ムクホークが意識を失ったことで見えていた。空中から落ちるムクホークに、トウコは走る。
 「く、そっ!」
 ムクホークを背中で受け止める。ボールに仕舞えばいいかもしれないが、ボールで仕舞うには、距離が必要だった。それよりも背中で受け止める方を選んだトウコだが、ムクホークの体重は約25㎏。トウコが受け止めるには少々の無理があったかもしれないが、怪我は無かった。
 「げほっ! うー……大丈夫、ムクホーク?」
 ムクホークをボールに仕舞い、トウコは元の場所、ノボリの前に戻ると、一勝一敗一引き分けですね、と呟いた。
 「あと二匹で決まりますよね。これで、勝負がつかなかった場合はどうするつもりですか?」
 「その場合は心配する必要ありませんよ。なんせ――わたくしが勝ちますから」
 「凄い自信だな。ムカツクぐらいに」
 四匹目。ノボリはオノノクス、そしてトウコはラッタを出した。
 「おや、ミロカロス、ですか」
 トウコは指を向ける。
 「ミロカロス、なみのり!」
 駅のホームで波が登場する。周りで観ていた観客たちは自分を庇い、ノボリも帽子を深く被った。ひらり、とトウコはミロカロスに飛び乗り、笑みを浮かべた。
 「トレーナーは自分が傷つくことを覚悟しなくてはいけない。覚悟の無い人はトレーナーではなく、ただの〝お遊び〟だ」
 ポケモンに乗って闘うと言う事は、自分が怪我する可能性が高くなるので、行う人は少ない。これはトウコの覚悟。
 「なら、それを証明してくださいませ! オノノクス、じしん!」
 「ミロカロス、れいとうビーム」
 ミロカロスのビームが地震で相殺されるが、トウコは身動きせずに声を飛ばした。その声は動揺なんか一切見られない
 「もう一度れいとうビーム」
 冷静な声だった。
 「りゅうのはどうです」
 ノボリも同じく。オノノクスは身体が光り、りゅうのはどうを飛ばす。それは、ジュエルを持っている証拠だ。ドラゴンジュエルで威力が上がり、れいとうビームを相殺するどころか、その波動がミロカロスに当たる。衝撃がトウコにも通じ、りゅうのはどうがトウコを襲った。衝撃が伝わり、トウコの肌が裂けた。赤い、液体が。血が飛んだ。
 「――まだ、だ! ミロカロス、ミラーコート」
 特殊技であるりゅうのはどうをミラーコートで二倍返しにすると、さらに指示を出す。
 「ミロカロス、アクアリング」
  アクアリングは徐々にHPを回復する技。
 ドラゴンジュエルで、特防が高いとは言えそれなりのダメージを受けたミロカロスと、虫の息のオノノクス。一進一退だが、どちらかと言えばオノノクスの方が不利に見えた。
 「実に、素晴らしい! そのミロカロス、よく育てられております。わたくし、感動しておりますが――――先ほどの貴女の台詞を借りましょう。〝わたくしのオノノクスを甘く見るな〟と」
 ノボリが目を細める。
 そして、声に出なかったが、オノノクスが近寄った。危ない、と思ったがミロカロスは素早く動けるわけでもなく『ギガインパクト』を直接食らった。
 当然、ミロカロスに乗っていたトウコにも。
 再び血が空中を舞う。衝撃でミロカロスから吹き飛ばされ、トウコは頭を床に打ち付けた。
 「――お、おきゃ」
 「――ぁ」
 嫌な音が響き、周りの観客の悲鳴が轟いた。
 が、トウコは血が流れ、頭を打ったけれどトウコは立ち上がる。当たったところが悪ければ起き上がれないが、瞬時に腕で頭を庇ったからだろう。腕には切れた傷と擦り傷が見えた。
 「〝覚悟〟を決めているから――まだ闘える」
 トウコは誰かに言うのではなく、自分に言い聞かせるように呟いた。まだ、闘えるのだと、トウコは呟く。鉄道員も、ノボリも、観客もトウコを見つめていた。
 「これで――私が勝ったら、引き分けになるわよ。サブウェイマスターさん」
 ボールをぐっと掴んだ。
 「……シャンデラ」
 ノボリはボールからシャンデラを出す。予想した通り、あのシャンデラが彼のパートナーなのだろう。だとすれば、トウコが出すポケモンは決まっている。
 最初から、この子を最後に出すつもりでいたのだから。
 「ラッタ!」
 周りの廃人がざわついた。
 ラッタを悪く言っているのではなく、勝負が見えていると思ったのだ。
 「ラッタ、ですか」
 「そうよ。私のパートナー。たとえ〝廃人〟が弱いと言ったとしても、この子を馬鹿にするな。私のラッタは――強いわよ」
作品名:ここで生きていく 作家名:津波