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大佐、逮捕される。

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「説明は任せた、鋼の。私は少し焼死体を見せてもらう。」
「見せてもらうじゃねぇよ、子供がそんなもん、見るんじゃねぇっ」
「ノックス先生、違うから。あー、ほら、いつものアルじゃないだろ?誰かに似てるだろ、あの偉そうな言葉使いとか、人の意見聞いちゃいない態度とか・・」
「・・・確かに、まるで捕まったマスタング大佐みてぇだな。」
「正解。あれ、中身は大佐な。体はアルだけど。」
「!?そ、そんなことが・・・」
大声を出すノックス先生の口を慌てて押さえる。
「声が大きい、ノックス先生。・・・あるんだよ。不幸なことに。大佐は、牢に入れられたんだけど、体と魂をアルと入れ替えて、アルの体で今回のことを調査中なんだ。代わりにアルは大佐の姿で牢に入っている。・・・もの凄く不本意だけど、俺も協力して今回の事件、調べているんだ。」
「・・・錬金術はそんなことが出来るのか?」
「どちらかというと・・・体質かな。」
「?まぁ、どっちでもいいか。・・・エライことがあるもんだな、長生きすると。」
焼死体に額がひっつくほど観察しているアルを見て、アルの中身が大佐であると確信したらしいノックス先生は、やれやれという具合に首を振った。
先生が納得したのを見計らったかのように、大佐が声をかける。
「この焼死体の身元は分かったのか?」
「歯の治療痕から、コッカー中佐とさっき特定できたばかりだ。」
「そうか・・・この匂いは?・・・エタノールだな。」
「あぁ、薬品をかけられて焼かれたみたいだ。ところどころ皮膚がケロイド状に溶けているから、硫酸系のものもかけられたんだろ。」
「と、いうわけだ。私が犯人ではないとわかってもらえたかね?鋼の。」
ノックス先生を見ると、深く頷く。
「焔の錬金術師が焼いたもんじゃねぇよ。俺が保証する。」
「・・・わかった。あんたが犯人じゃないって認めるよ。」
「わかってもらえて何よりだ。・・・うん?これは・・・ノックス先生、この傷跡を見たか?」
「傷跡?どこだ?」
「頭部の耳の当たりだ・・・耳の穴と微妙にズレて、側頭部を真っ直ぐ貫通している穴がある。」
「いや、気づかなかった。どれ・・・本当だ。こりゃ、銃槍だな。」
「銃槍?」
「あぁ、耳の穴かと思って気づかなかった。おまけに焼けているから・・・巧妙に隠されているが、こりゃ銃槍だ。ってことは、この遺体は、まず撃たれてから焼かれたってわけだな。この傷の位置からすると、ほぼ耳の穴に銃をつきつけられて撃たれている。ヤケドの跡は生体反応があるから、頭を撃たれて動けなくなったところを、まだ生きているうちに薬品をかけ火をつけて殺したってところだ。胸クソ悪い殺し方だな。」

想像したら吐き気がした。思わず手で口を覆う。なんて酷いことをするんだ。
焼死体から目を背けると、無造作に置いてあった死体検案書が目に入った。
付いていた写真を見る。コッカー中佐の生きている姿を見るのは初めてだ。
栗毛色の髪の短髪で、口をヘの字にして写真に写っていた。その世間を斜め右から見ている感じが、どことなくヒューズ中佐と似ていた。

「本当に惜しい者ほど早く逝く。・・・どうして、私はいつも間に合わないんだ。」

小さい呟きが耳に入った。
聞こえた方を向くと、大佐が目を背けることなく、じっと焼死体を見ていた。
握られた拳が微かに震えている。

その様子に誤解していたことを知った。
今まで、アルと入れ替わってまで、自分の濡れ衣を晴らすために、自分のために大佐は躍起になっていると思っていた。
だが・・・被害者のコッカー中佐を思ってのことだったのか。
はぁー、ロス少尉のときも思ったが、本当にわかりにくいんだよ、アホ大佐め。

「今回のこと調べてるって言ったな。気になることがある。」
大佐は、焼死体から目を外し、視線でノックス先生に先を促す。
「さっきハクロ将軍が来て、ひと騒動あった。」
「ハクロ将軍が?」
「あぁ、何でも検死する必要はない。早くご家族に遺体を返して葬儀を執り行いたいってな。
この遺体が誰かもわからんのに、ご家族も何もあるかって追い返したんだが・・・」
「ハクロ将軍は、この遺体を検死されたくなかった・・・とも考えられるな。例えば、銃槍がバレるのを恐れていたとか。」
「そういうこった。参考になったか。」
「あぁ、とても。いつもスマンな、おかげで次に何をすべきか分かった。」
「相手は将軍だ、あまり無茶すんなよ。」
「それは、約束できんな。何せ大佐が逮捕されたのは彼のせいらしい。
私はやられたら倍やり返す主義なんだ。」
大佐は不敵な笑みを浮かべて―――だから、その顔でその表情はヤメテくれ――俺たちはノックス先生の部屋から出た。


――――
「ハクロ将軍が犯人なのか?」
「ほぼ、間違いなかろう。」
「もしかして・・・本当に部下を思って、遺体を遺族に早く返したかったってことは?」
「ありえないな。彼はそんなに部下思いじゃない。将軍とは東部で一時期一緒に配属されたことがあるんだが、確か1小隊が彼の作戦ミスで全滅した翌日に、上司の娘の結婚式に参列するくらいは薄情だったハズだ。」
「・・・サイテーな野郎だな。」
「その通りだ。私も彼をそう思っているのが態度に出てしまったんだろうな。何かと私に対して当たりが強かった。今回、すぐに私が逮捕されたのも、絶好の機会だと思って彼が手配したのだろう。それに、第一発見者が将軍なら、死体の不自然さも説明がつく。」
「あぁ、そうか。焔の錬金術師の仕業じゃなきゃ、死体だけ焼くなんて出来ないから・・・。」
「将軍が、コッカー中佐を別の場所で殺し、死体を焼いた後に自宅まで運び、第一発見者となった・・・そう考えれば、焼死体の辻褄も合う。その後、現場で指揮をとっていると報告があったな。多分、自分の犯行の証拠など、全て消し去っているのだろう。」
「どうするんだ?証拠は今のところ何もない。ただ、焼死体が錬金術で焼かれたんじゃなくて、銃で撃たれたってことがわかったくらいじゃないか。」
「それも状況証拠とはなるが。」
「状況証拠?」
「コッカー中佐は軍人だ。彼が何もせず耳に銃口を当てられるなど、考えられん。西部の国境警備隊にも在籍していたという話を聞いた。現場を、戦いを経験している軍人だ。不審者、もしくは警戒している相手では、そんな状況とはならんだろう。・・・見知った人間から不意に襲われたのであれば、油断したのであれば、説明はつく。」
「つまり、顔見知りの犯行。」
「そうだ。例えば、直属の上司とかな。これだけでは将軍に特定は出来んが。
現場を将軍に押さえられているのは痛いな・・・証拠が・・・情報が少なすぎる。」
大佐は、腕を組んで片手を口に当て、黙り込んだ。
どうでもいいけど、眉間のシワ、深すぎるぞ、アルの顔に癖で残りそうなくらいだ。・・・・イヤだな、そんなアル。
「あ~、情報って言えばよ、そのコッカー中佐とはどんな話したんだ?国境警備隊の話とかか?」
「いや、経歴は軽く聞いたくらいで、もっぱら軍の情報系統の話をした。具体的には軍内部の不正を告発する機能をもっと簡明に出来る組織が出来ないかを・・・・鋼のっ!」
「なんだよっ!?」
作品名:大佐、逮捕される。 作家名:海人