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MuV-LuV 一羽の鴉

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 前回香月の部屋に呼ばれた時には数分遅れただけだと言うのに資料の紙を投げつけられると言うえらい目にあった。

 だからこそ今回は焦っていたのだが…気分屋と言うのは困る。

「まぁそこらへんに座りなさいよ。積もる話もあるし」

 積もる話と言うのはAC、そして追加武装の事だろう。

 その事は俺も分かっているので香月の言う通り近くにあった椅子に腰を下ろす。

 すると後ろの方から一人の少女が此方に駆け寄ってきた。

「訓練…お疲れ様です」

 社と言う香月の助手のような少女だ。

 香月から聞いた話によると人の心を読み取る事が出来るリーディングと言う能力を持つ少女らしい。

 一度その話が本当かどうか確かめて見たのだが…どうやら本当のようだ。流石に驚いたよ。

 そんな特殊な能力を持つ社だが…過去に色々あったらしく中々心を開いてくれなかった。というより俺も心を開こうとはしなかった。

 しかし俺と社、どちらも過去に暗い過去をもつせいか、段々と時間が立つにつれ話すようになってきて、社も俺も互に心を開いた。今では社に付き合って一緒に遊んでたりもしている。

「本当に社はシルバに懐いてるわね。社、シルバのどこが良いの?」

 まるで俺には良い所がない、と言わんばかりに質問を社に投げかける。

 香月に遠慮がないのは今更の話だが。

「優しい…ところです」

 そう言いながら服の裾をギュッと握ってきた社。

 その行動に思わず俺も反応してしまい、反射的に社の頭を撫でてしまう。社は本当に可愛らしいと思う。妹がいたらこんな感じだったのか?なんて思ってしまう程だ。

 俺に頭を撫でられた社はされるがままに撫でられている。

 別に嫌がっているわけでもなく、寧ろ喜んでいるようなのでそのまま暫く頭を撫でてやった。

「シルバぁ、あんたは此処に何しに来たんだっけ?」

 香月のその言葉に思わずハッとしてしまう。

 危ない…本当に此処に来た目的を忘れていた…。恐るべし社。

「呆れた。本当に忘れてるなんて。まぁいいわ。それよりもこれ」

 本当の目的を忘れた事を見抜かれ、思わず焦るが、そんな俺を介さずに分厚い書類を俺の方へと投げつけてきた。

 それを空中で掴み、軽く見通す。

 …どうやらAC起動時にコジマ粒子が周囲へと与える環境破壊の結果について書かれているようだ。
 
 この1年間、ずっと特殊任務部隊の奴らと訓練していた訳ではない。

 ACを用いたBETA殲滅を何度か行い、それと同時に調べていたのがこの結果だ。

 この結果は俺が今最も気になる所であるために、食らいつくようにして書類の中の文字に目を通す。

 …。

 結果としてコジマ粒子を用いたACの起動になんら問題はない様子。環境破壊の問題もそこまでのものではない。つまりACの使用は許可されたと言う事だ。

 その結果を見た瞬間全身の力が抜けるが分かった。

「ACは今まで通り使用出来る。これでいいんだな?」

 一応は香月に確認しなければならないだろう。ACの管理権限を持っているのはあくまで香月なのだから。

「ええ、構わないわ。と言っても、今まで通り裏の仕事限定になるわよ?」

「それは構わん。寧ろ俺に回ってくる仕事は裏の仕事ばかりだろうに」

「それもそうね」

 と言う事で、この世界でもACを使えるようになった。これは俺にとって非常に喜ばしい事だ。俺自身の生存率が上がると共に、特殊任務部隊の人間の生存率も大きく跳ね上がる。

 …自分勝手かもしれないが、俺を変えてくれたあいつらを死なせるつもりはない。誰一人としてだ。

 って所まではいいんだが、この分厚い資料の中で一つだけ気になる項目があった。

 ML型抗重力機関の組み込みと言う項目だ。

 今までに聞いた事のない単語に疑問が浮かんでくるが…ACに組み込む以上、何らかの兵器なのだろう。

「香月、このML型抗重力機関と言うのはなんだ?」

 当然湧いた疑問を香月の方へとぶつけるのだが、その返答として返ってきたのは数枚の資料。

 つまりはこれを読めと言う事だろう。

 …自分で説明する気はないのか?

 そう思ってしまうが、それを口に出せば何を言われるかわかったもんじゃないので心の中にしまっておく。

 そして早速香月から手渡された資料に目を通した。

 …。

 要するに、ML型抗重力装置は重力の制御をするための装置って事か?

 重力制御。そんな技術は前の世界にもなかったために理解が進まない。

 しかし、このML型抗重力装置によって生み出されるラザフォート場。これが非常に強力な兵器だと言う事だけは理解出来た。

 非常に強力な兵器だというのなら是非ともACに積んでもらいたい。

 咄嗟にそう思うが、これは装置であり、ACを操縦する俺が制御しなければならない。

 今までに重力制御などと言う機械を触った事も見たこともない俺が制御出来るのかと言ったら…無理だろう。

 それにこの重力制御が誰しもに使えるのなら既に普及している筈。それが普及していないと言う事は、非常に制御が困難だと言う事が容易に想像出来る。

「これを本当にACに組み込むつもりか?確かにラザフォート場は強力だが…俺に制御出来るのか?」

 もし重力制御が出来ない場合、俺に待っているのは死だ。

 最後の一枚の資料に、過去、このML型抗重力装置を用いた有人実験を行った結果が書かれていた。

 結果、有人として搭乗した12人全員の死。

 つまり重力制御が出来なければ死ぬと言う事だ。

「まだ分からないわ。只…今まで見てきて感じたのはあんたの処理速度の異常さよ。普通の人間なんかとは比にならないわ。説明してもらえるかしら?」

 まさかそこまで見抜かれているとは思ってもいなかったな…。

「…隠していても仕方がない、か。分かった話そう。と言ってもそんな難しい話じゃない。最初俺が香月と会った時に言っただろう?肉体を改造されてると。つまり肉体だけじゃなく、脳も改造されてるってだけの話だ」

 他のリンクス達は脳まで弄られていないだろう。

 恐らくリンクスの中で脳を弄られているのは俺だけ…。
 
 最強の兵士を作り上げるための実験。その結果が俺であり、その実験で唯一の生を掴む事が出来たのは…俺だけだ。

 この話はこんなに簡単な話ではないが…今説明する必要はないだろう。今重要なのは俺が過去に何をされ、その結果どうなったか。それだけだ。

「シルバさん…」

 ふと隣を見ると社が非常に悲しそうな顔をしていた。

 …ああ、リーディングで読み取ってしまったのか。

 社のリーディング能力は本人が読み取りたくない、と思っても、強い感情や思い出は勝手に流れ込んできてしまう。

 だからこそ俺の過去の映像が社に流れたのだろう。一体何処からどこまでの映像を見てしまったのか気になるが…どちらにせよいい映像ではない。俺の過去なんて悲惨な事しかないのだから。

「何を見たのか分からないが…気にする必要はない。俺は大丈夫だ」

 そう言いながら社の頭を撫で、落ち着かせようとする。
作品名:MuV-LuV 一羽の鴉 作家名:コロン