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MuV-LuV 一羽の鴉

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 俺の差し出した手を掴み、立ち上がった遥は少しばかり汚れたスカートを軽く払う。

 だが皆の前で転んだのが余程恥ずかしかったのだろう、顔を真っ赤に染めた遥は俺と視線を合わせようとしない。

「うぇ、勘弁してよお姉ちゃん!」

 茜が皆の前で遥をお姉ちゃん、と呼ぶことは滅多にないのだが、今の遥には何かを感じたのだろう。

 先程の興奮は瞬時に覚め、顔を真っ青に染めている。

 怒った遥は怖い、と言う事だろう。覚えて居た方が今後のためになりそうだ。

 そんな二人のやり取りを見て笑い合う特殊任務部隊の皆。それに釣られて俺も少しばかり笑ってしまう。

「さて、話を戻そう」

 俺がそう仕切り直した皆も瞬時に気持ちを切り替える。

「まずは速瀬率いるA小隊からだな。築地、高原、柏木は途中で撃墜されたが、早瀬は最後までしっかりと残ったな。此処は褒めておく」

 俺の言葉に速瀬は嬉しそうに頬を緩ませるが、残念ながら褒めるだけじゃない。

「だが速瀬。お前は前に出すぎだ。今回のシミュレーションが小隊で行っていると分かっているのか?柏木は本来のポジションだったからまだしも、築地と高原は違うポジションなんだ。隊長であるお前がしっかりと纏めないと駄目だろうが」

「っう」

 痛いところを突かれた、と言わんばかりに苦々しい表情になる速瀬。

 この表情から察するに速瀬自身もシミュレーター終了後に理解したのだろう。

 スピード重視の攻撃型にするのはよかったが、それは小隊全員がついていけなければ意味がない。

 攻撃型と言うのは一人でもかけると瞬時に崩れ安いタイプの陣形だ。

 故に速瀬一人の実力が高かろうが、中衛である築地と高原に合わせる必要があったと言う事。

「まぁ始めてにしてはよく頑張っていたぞ速瀬」

「ぁ…は、はい!」

 少しばかり落ち込んで居た速瀬だが俺がそう言うと嬉しそうに首を大きく振る。

「築地と高原のなれないポジションでよく頑張ってくれたと思う。次に今回のメンバーでやるときはもっといい戦果が出るように頑張れよ?」

「はい!」

「柏木は上手く周囲の状況が掴めていたようだな。攻撃重視の陣形だったが上手く機能できたのはお前の御蔭でもある。次も宜しく頼むな」

「了解!」

 これでA小隊は良しとするか。このあとの反省会でそれぞれにしっかりと反省点を練ってもらえばいい。今俺がするのは一人一人を労う事だ。

「次は宗像率いるB小隊だが…悪くないはない結果だ。中層にまでしか到達できていないが、それでも全員がしっかりと中層にまで残る事が出来たのは良い事だ」

「ありがとうございます!」

「悪い点を述べるなら…そうだな」

 B小隊はどちらかと言えばバランス型。一点突破を目的としない進行のために今回は大群に囲まれ、それを突破することが出来ずに死んでしまった。

 つまりそれは宗像の見極めが悪かった、と言う事になる。

 もう少し上手く状況を理解し、整理する事が出来れば連隊規模のBETAに囲まれる事はなかっただろ。

「宗像がもう少し上手く小隊を率いる事が出来たならばもう少し良い結果を引き出す事が出来ただろう。お前も分かってるだろう?」

 俺がそう言うと宗像も悔しそうに唇を噛みながら小さく頷く。

「なに、そこまで自分を責める必要はない。始めてにしては上出来だ。また次にやる時はもっと連携を纏めれば上手く行くだろう。風間も上手く宗像をサポートすれば今回のような結果では終わらないと思う。次に期待だな」

「「はい!」」

「茜は弾幕の張りが少し薄かったな。確かにHIVE攻略に置いて弾数を残す事は重要になるが、それを上手く見極める事も重要だ。いつどこで使うのか、此処は節約するところなのか、それを見極めるようにすればお前はもっと強くなれる」

「はい!」

「麻倉も茜と同じようなものだ。92式多目的自律誘導弾の使いどころが良くなかったな。お前ももっと時と場合を見極めろ。分かったな?」

「はい!」

 最後に残るのは伊隅大尉。…と言っても悪かった点は特になかったな。俺の機動にもついてこれてたし、最後まで生き残っていた。流石は隊長、ってことだろう。

「伊隅は…問題ないな。最初であれだけ俺について来れたんだ。充分な成果だろう」

「ありがとうございます!」

 伊隅の評価が終わったところで改めて特殊任務部隊の方に視線を向ける。

「これでHIVE攻略シミュレーター訓練は終わるが、今回の失敗で学んだ事を次に生かすように!わかったか!」

「「「了解」」」

 これでシミュレーター訓練も終わりだ。

 午後には香月と話し合いがあるので俺は此処でお開きになる。

 香月と話し合いと言っても恐らくはACの事についてだろう。ここ一年の歳月を掛けてようやくACの整備態勢を整える事が出来たようだ。随分と時間がかかったが…問題はここからだろう。

 あくまでも整備態勢が整っただけであり、根本的解決には至っていない。コジマ粒子をどうするか、だ。

 コジマ粒子はジェネレーターによって精製されるのでエネルギー枯渇の問題はないが、やはり気になるのは環境汚染の問題だ。

 流石にAC一機が撒き散らすコジマ粒子で世界が云々になるとは思えないが…。

 まぁ今回の話し合いはそれについてだ。あとは戦術機に取り付ける武装と追加スラスターの事だな。俺がここ最近で不備だと感じた追加武装を香月に作ってもらうように相談している。

「それでは午前のシミュレーター訓練を終わりとする。解散!」

 号令を掛けると同時に俺は香月がいる部屋の方に踵を向ける。

 先程時計を確認したら既に時刻は13:20。

 香月との待ち合わせ時間は13:00。

 つまりは20分も遅刻している事になる。更にここから部屋にたどり着くまでの時間を考えると30分の遅刻になるだろう。

 30分も遅れるとなると香月に何を言われるか…考えただけでも頭が痛い。

 これから香月に言われる愚痴に頭を痛ませながらも格納庫を後にした。

 後ろから涼宮達の俺を呼ぶ声が聞こえたが…後であいつらには謝っておけばいい。流石に香月との約束を無下にする訳にはいかないんだ。

 そう思いながらも俺は香月の部屋に足を急がせた。

※誤字脱字の方がありましたらコメントなどで指摘してください。直ぐ様修正しますので。宜しくお願いします。

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 走って来た事により少しばかり乱れた息を整えつつ、香月がいる部屋の扉をノックする。

「シルバだ。入っても大丈夫か?」

 中から返事はないが…構わん、入ってしまおう。

「入るぞ」

 一応入ると言う意思を示してから、扉の片隅に設置された機械にカードを通す。

 ピピッと言う機械音と共に扉は開き、香月にいる部屋の中に入ってゆく。

 相変わらず辺りには資料であろう紙が至る所に散乱しており、香月の生活のだらしなさを物語ってくれている。

「あら、やっと来たのね」

 30分も遅れた事に怒っていると思っていたのだが…案外なんとも思っていないようだ。
作品名:MuV-LuV 一羽の鴉 作家名:コロン