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MuV-LuV 一羽の鴉

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「これは俺もつい最近になって思い浮かんだ概念だからなんとも言えないが…戦術機が戦車級にとりつかれた場合は他の仲間に助けてもらう場合が多いだろ?だがそうして仲間を助けている内にその仲間も戦車級にとりつかれ…このパターンがよくあると思うんだ。そこで俺が考えたのがサブ射撃だ。機体に戦車級が取り付いた場合のみ作動する兵装だな。機体に戦車級が取り付いた場合のみ起動するのだから制御はオートでも構わない」

「つまり機体にオート射撃が行える兵装を取り付けろってことね?」

「理解が早くて助かる」

 もしこれが普及すれば戦線の生還率は少なからず上がるだろう。

 戦車級に取り付かれ死んでゆく実例は無数に挙げられている。

「サブ射撃って言うのなら案外簡単に出来るかもしれないわ。…それにしてもあんた良くもこんなに考えが浮かんでくるわね」

 香月が呆れ気味な口調でそう言ってきた。

 …確かにそうかもしれないが…前の世界の技術がこの世界の技術よりも数段上だったのだから考えが浮かんでくるのは当たり前だと思っている。

 もっと深く考える時間があれば色々案は浮かびそうだが…。

「でもあんたの考えは全部悪くないわ。寧ろこの世界にない新しい概念が多いから私もいい暇つぶしになるわよ」

 暇潰しかよ…思わずそう思ってしまうが、香月がこの世界の事を誰よりも考えているのは俺も理解している。

 香月は口ではこんな事をいうが、内面ではしっかりと考えているのだ。

 だからこそ俺はこうして香月に話を持っていく事が出来る。

「そう言ってもらえると助かる。他には何かあるか?」

 一応他にも武装の話を幾つか香月に通してはいるのだが…。

「今日の所はこのくらいでいいわ。まさかまた武装の話が増えるなんて思ってもいなかったわよ。私だって暇じゃないんだから」

 そう愚痴を零す香月だが…その表情は言っている言葉とは裏腹に生き生きとしている。

 俺の考えも悪くなかった、と言う事か。

「それじゃあ俺はPXの方に向かうとする。流石に腹が減って来た」

 今思えば俺は昼飯を食べていない。

 部屋に掛けられている時計を見れば既に14:30。

 午前はシミュレーター訓練もしたのだから当然腹も減ってくる。

「そ。お疲れ様」

「ああ。それじゃあ、俺が言った武装の件、宜しく頼む」

「ふふん。任せておきなさい」

 香月の頼もしい返事を聞いてから、部屋を出た。

「さて…PXに向かうか」

 昼の時間は大きく過ぎているが…仕方のないことだ。

 昼飯を食べたら格納庫の方に向かってみるか。もしかしたら特殊任務部隊の人間が訓練してるかもしれないしな。

 そんな事を考えながら、PXの方へと足を急がせた。

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作品名:MuV-LuV 一羽の鴉 作家名:コロン