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MuV-LuV 一羽の鴉

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出会うはずのない二人

 
 
「少佐。香月副司令がお呼びです」

 香月とAC,武装の事について話し合った次の日、俺は特殊任務部隊の奴らと昼食をとっていたのだが、後ろの方らピアティフ中尉がそう囁いて来た。

 余り大げさに言えない辺り何かしろ問題が起きたのだろうと察する。

「分かった。今すぐ向かう」

 香月に呼ばれた以上、俺はそちらに向かわなければならない。

 目の前に残っている昼食の残りを一気に胃の中に押し込み、特殊任務部隊の皆に断りを入れてから席を立つ。

 速瀬が何やら文句を垂れていたが、香月の命令である以上仕方がない、と告げてからピアティフ中尉と香月の所へ向かった。

ーーーーー
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ーーー
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「中で香月副司令がお待ちです」

 そう言い残し、ピアティフ中尉は来た道を引き返して行く。

 いくら香月の秘書と言えど、呼ばれてもいないのに部屋に入ることは出来ないらしい。…当然の話か。

 来た道を引き返して行くピアティフ中尉の後ろ姿を見えなくなるまで見届けてから扉をノックする。

「シルバだ。来たぞ」

「入りなさい」

 今回は珍しく香月からの返事があった。

 …しかし心なしか言葉に刺がある気がする。

 いや、何時も香月の言葉には刺はあるんだが、今回のそれは強張っているような声だ。

 これは何かあるな、と心構えを持ちながら、機械にカードを通し、香月の部屋の中へと入る。

 そして部屋の中に入った瞬間、俺の視界に飛び込んで来たのは、一人の少年に対し、香月が銃を突きつけている姿。

 予想外の姿に思わず硬直してしまうが、その硬直も直ぐ様解け、香月の方へと駆け寄る。

「香月、この少年は誰だ?」

「知らないわ。私が聞きたいくらいよ」

 香月の返答に目を丸くしてしまう。

 それと同時にこの少年が此処にいる意味がさっぱり分からない。

 この少年が此処にいる以上、この横浜基地の中を誰かに連れられて来たのは確かな筈。

 横浜基地と言う名目を掲げている以上、その中のセキュリティーは強固なものであり、今俺の目の前にいる少年がそのセキュリティーを看破出来るとは思えない。

 なら香月がこの少年を此処に連れてくることを許可し、誰かが連れてきたのは明白なのだが…何故銃を突きつけている?

 最初から銃を突きつけるような事態に陥るならば最初から部屋に入れなければいい話だろうに。

 …そうか。

 この少年の正体が分からずとも、部屋に入れる意味がある。そういう事だろう。

 やっと香月がこの少年に銃を突きつけている理由が、何となくだが分かり、それについて納得していると少年と視線が交わった。

 俺はこの少年を知らないためになんとも思わないが、少年の方はそうでないらしく、俺の姿を見るや驚愕の表情に変わる。

 …どこかで会った事があるか?

 いや、それはないだろう。一年前にこの世界に来た俺の知り合いと言えば両指で数える程度しかいない。その中にこの少年の顔はない。

「シルバ、この餓鬼が此処に来て私になんて言ったか分かる?」

 唐突に香月がそんな質問を俺にしてきた。

 分かるわけないだろう。

 思わずそう言いたくなってしまうが、それを堪え、香月の質問の意味を考える。

 香月が俺を此処に呼んだ以上、俺になんら関わる事項であることは明白。

 いや…まさかな。

 ふと一つの解答が頭の中に浮かんでくるが、それはないと自らその解答を消そうとする。

 だが深く考えれば今の考えは間違いではないかもしれない。

 言うだけ言ってみるか…。

「俺は違う世界の人間です、か?」

 自分でも馬鹿らしいとは思っている。

 そんな違う世界の人間がおいそれとこの世界に来ているなら俺の存在はこうも希少になる筈がない。

「惜しいわね」

「惜しいのかよ」

 香月の解答に間髪入れずに突っ込んでしまう。

 …正解にならずとも、惜しいと言う事はこの少年も俺と似たような境遇なのだろう。

「この餓鬼が言うにはね、この世界を何度もループしているらしいのよ」

「っな!?」

 この世界のループ。

 そう言った知識に乏しい俺でもその意味は理解出来る。

 つまりはこの世界を何度もやり直している、と言う事だろう。

 いや、経験している、と言った方がいいかもしれない。

「その話は本当なのか?」

 焦る気持ちを抑えながら、少年にそう質問する。

「はい。本当です。その証拠も夕呼先生に提示しています」

 その解答が本当なのか香月にアイコンタクトを送る。

「証拠になるかどうかは微妙な所だけど…普通の人間が知りえない情報をたくさん知っていたわ。オルタネイティブ5の工作員の可能性もあるけどね」

 オルタネイティブ5。

 一度香月からその計画の全貌を聞いた事がある。

 その計画を聞いた時にはClosePlanと似ている、などと思ってしまった。

 だが、テルミドールが計画したClosePlanは全人類を救済するために練られた計画であるに反し、このオルタネイティブ5は少数の人間が救済される、と言う計画だった。

 オルタ5の計画全てに反対と言う訳ではない。

 BETAに侵食されたこの世界に見限りをつけ、宇宙に逃げると言うのは…ClosePlanと同じだ。

 だが、全人類が助ける事を視野に入れず、少数の人間だけが助かろう、と言う魂胆だけは気に食わない。…最もClosePlanを実行した俺にそれを言う権限はないのかもしれないが。

 所詮同じようなものだ。オルタ5も、ClosePlanも…地球を捨てる事には変わりない。違いは助かる人数の差、だけだ。

「少年。君は何度この世界をループしている?そして俺の存在はあったのか?」

 オルタ5は実行されてしまったのか。

 今俺が最も気になっている点はここだ。

「この世界をループするのは…三度目です。その内どのループにも貴方の姿はありませんでした」

 …だから俺の姿を見たときに驚いていたのか…。

 それにしてもこの世界を二度も経験していると言うのか…。

 相当辛い人生だったろうに。

「貴方は誰なんですが?」

 シンプルな質問。

 その疑問は最もかもしれないが。

 二度も世界をループしておきながら、どのループにも存在しなかった男が香月の隣にいる。

 それはこの少年にとって非常に驚くべき所でもあり、同時に疑うべき所だろう。

「君と似たようなものだ。最も、俺は君と違い、此処とは全く異なる世界から来た人間だが」

「!!」

 少年の言葉から分かったが、やはり俺の存在は異常だったようだ。

 少年が経験したループに俺が入れば、俺は必然的にこの世界に来てたのかもしれないが、残念ながらそうではない様子。…残念かどうかは分からないが。

 とにかく、俺がここに来たのは本来有り得ない事、だと言う事だ。

「一回ストップ。その話はまた後にしなさい。…それで白銀武と言ったかしら?」

「はい」

「私に信じて欲しいなら、それに見合う動きを見せなさい。私を納得させる事の出来る証拠を提示出来ないなら…此処から出て行ってもらうわ」

「…分かりました」
作品名:MuV-LuV 一羽の鴉 作家名:コロン