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ゆらのと

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その表情に、心を強く激しく揺さぶられる。
距離を詰めた。
間近にある顔。
閉じられたまぶた。
長い睫毛。
そして、そのやわらかな唇に、自分のそれを重ねた。
受け止めた唇が、触れ返してくる。
触れている、だけなのに、その感触が気分を高揚させる。
ほしい。
もっと、ほしい。
胸の中で心臓が力強く鳴り響いている。
脈打ち、体内に広がる血潮は熱い。
顔を見る。
黒目がちの切れ長の眼が向けられる。
汚れを知らないわけではないはずなのに、その眼は澄んでいる。
その澄んだ眼は熱を帯びている。
そして、こちらをじっと見ている。
この眼が見ているのは、今は、俺だけだ。
そう思い、感情の昂ぶりのままに、その身体を胸に抱き寄せる。
抱き慣れた、抱かれ慣れた身体はなんの抵抗もなくするりと腕の中に収まった。
長い間ずっとほしいと思い続けてきた身体だ。
その温もりを強く感じる。
胸に充足感が押し寄せてくる。
「頭のてっぺんから足の爪の先まで、好きだ」
嘘いつわりのない想いを口にする。
「こんなふうに思うのは、おまえだけだ」
ずっと、求め続け、思い続けてきた。
これまで一夜限りのという意味ではなく何人かと深くつき合ったことがある。
遊びのつもりではなかった。
その相手を大切に思っていた。
しかし、そんなときも、胸の中に、いた。
苦しくて、うち消そうとしたことが何度もあった。
でも、消えなかった。
そして、それは、暗く沈んでいるときに灯りのように心を明るくし、あるいは、鋭利な刃のようになって胸を内側から刺した。
ずっと、特別な存在だった。
今も、もちろん、そうだ。
望みが叶えられて、想いは減るどころか増えた。
桂の身体を、また、畳へと押し倒す。
今度は、桂はあらがわなかった。
畳に身を横たえ、こちらを見あげている。
その唇が動く。
「銀時」
名前を呼んだ。
それ以上は、なにも言わない。
しかし、もの言いたげな表情をしている。
強く、切ない、眼差しを向けている。
なにを言いたいのか、感じ取る。
だが、返事しない。
これが最後になるかもしれない。
そんなこと、考えたくもなかった。
胸が痛い。
その痛みをまぎらわせたくて、桂の頬に触れる。
だれよりも大切な、最愛の人。
運命という言葉は大げさすぎて、あまり好きじゃない。
けれど、もし本当にそれぞれに運命の相手が存在するなら、自分にとってそれは、間違いなく、桂だ。
離したくない。
強く、思う。
だが、これが最後になるかもしれない。
こんなふうに触れるのも、会うことすら、最後になるかもしれない。
なんでなんだよ。
胸の中で感情が暴れて、獣の咆哮のように叫ぶ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio