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ゆらのと

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経営者の家の周辺から捜索を始め、やがてどんどんそこから遠ざかり、猫缶やまたたびの木を持って歩き回っているうちに、遊んでいる子供たちからそれらしき猫を見たという情報を得た。
空は灰色がかった白に塗りつぶされている。
近くにある樹の葉をすっかり落としてしまっている細い枝が、何本も、空に向かって突き刺すように伸びている。
銀時は吹く風に身をブルッと震わせた。
もうそろそろ日が暮れる。
そうなれば、今よりもっと寒くなる。
「銀ちゃんー、新八ィー! 私がつかまえたアルー!」
猫を追って駆けていった神楽が、弾んだ足取りでもどってきた。
その腕には猫がいた。
猫は神楽から逃れようと暴れている。
しかし、宇宙最強ともいわれる夜兎族の神楽の力は強く、しっかりと猫を押さえこんでいて、放さない。
その猫を、銀時と新八はじっと見る。
「……神楽ちゃん、人違い、じゃなくて、猫違いだよ」
「オメー、この写真、ちゃんと見たのか。タマちゃんはもっと重量感のある猫だ」
「外を放浪しているあいだにやせちゃっただけアル」
「いやいや、タマちゃんは女の子だ。だが、オメーがつかまえたその猫には女の子にないはずのものがついてるじゃねーか」
そう銀時が指摘すると、神楽は顔を思いっきりしかめた。
鼻の付け根のあたりにしわが寄っていて、若い娘にあるまじき形相だ。
「引っかかれたりしながらつかまえたのに、ショックアル」
「猫違いでつかまえられたその子もショックだよ。もう放してあげなよ」
「ウン……」
神楽は猫を地面におろした。
せめてもの詫びにと思い、銀時はその猫のほうに開封済みの猫缶を置く。
だが、猫は神楽の手が離れるやいなや、猫缶には眼もくれず、ものすごい勢いで逃げていった。
神楽はしょんぼりと肩を落としている。
その顔には猫に引っかかれたらしい傷がついていた。
「まァ、暗くなってきたし、今日はもう帰るとするか」
銀時は神楽の肩をポンと軽く叩いた。
「そうですね、帰りましょう」
新八が優しい声で同意した。
そして、三人そろって歩きだす。
今日の夕飯はなににするか、そんな話をし始めると、とたんに神楽は元気をとりもどした。
三人で、あれはどうだこれはどうだと話しながら、歩く。
しばらくして、銀時は何気なく、うしろのほうに眼をやった。
さっきの猫がいた。
銀時が振り返ったのに気づき、ビクッと警戒しきった様子になる。
どうやら猫缶の匂いにつられてやってきていたらしい。
銀時は見なかったことにして、まえを向く。
近くでは、新八と神楽が今夜見る予定のテレビ番組の話で盛りあがっている。
その会話に銀時も加わるつもりだった。
しかし、ふと、脳裏に、さっきのとは違う猫がやはりあんなふうに警戒しきった様子でいる光景が浮かんだ。
過去に見た光景だ。
その猫の視線の先には桂がいた。
桂は猫を餌づけしようとしていた。
それを思い出した。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio