二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゆらのと

INDEX|11ページ/373ページ|

次のページ前のページ
 

「銀時」
だから、たずねようとした。
けれども、銀時は話を断ち切るように立ちあがり、戸惑う桂のまえを通り過ぎた。
桂も立ちあがる。
銀時は障子の近くまで行くと、それを開け放った。
秋晴れの外の明るい景色が、視界に飛びこんでくる。
まぶしい。
思わず、眼を細める。
「桂」
銀時が背を向けたまま言った。
「俺ァ、戦に出る」
声に強い決意がはっきりあらわれていた。
桂は表情を厳しくする。
さっき銀時の言った意味のわからないことは、頭の中から飛んでいた。
戦に出る、とは各地で繰り広げられている天人軍と攘夷軍との戦いに身を投じるということだ。
もちろん、攘夷軍のほうに加わるつもりなのだろう。
しかし、それは、幕府に対して盾突くことになる。
このままここにいられない。
すべてを捨てて、出ていくことになる。
だが。
桂は銀時の背中に向かって言う。
「奇遇だな、俺もそうしようと思っていた」
戦に出ることは、松陽が処刑されたときから頭にあった。
松陽の教えを受けていたので、もともと、幕府を支配しようとする天人に対して危機感を持ち、彼らからこの国を護らなければならないと思っていた。
その上、天人の圧力に屈した幕府に松陽を殺され、強く激しい憤りが炎のように胸の中で燃えあがっていた。
正義という綺麗事だけではなく、仇を討ちたいという憎しみもある。
しかし、それでも迷っていた。
家族や親しい者たちを置いて戦に出るのは、彼らに対する裏切りのようにも思えた。
それに、この生まれ故郷に二度と帰って来れなくなるかも知れない。
深く悩み、迷っていた。
だが。
さっきの銀時の言葉で、心は決まった。
あの瞬間、自分でも驚くほど、即座に、強固な決意が生まれた。
「本当にそれでいいのか」
振り返らないまま、銀時が聞いてきた。
幼い頃からの長いつきあいだ。
銀時は桂の迷いを知っていただろう。
自分が戦に出ると言ったすぐあとに、桂もそうすると言ったのだから、自分の決断が桂の進む道まで決めてしまったのではないのかと心配したのだろう。
「ああ」
桂は少し笑う。
「別におまえについていくわけじゃない。これは俺の意志だ」
そうきっぱりと告げると、桂は歩き、銀時の隣に立った。




どれだけ想えば、想いを告げることがゆるされるのか。

銀時の言葉の意味を、桂は知らないままでいた。








作品名:ゆらのと 作家名:hujio