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ゆらのと

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別れるまえにも、たとえば桂の家に泊まってその翌朝に帰るときに、同じような気持ちになったことが度々あった。
けれど、今はこうした状況だから、なおさらだ。
ただ一緒にいるだけで、心に温かいものが満ちる。
離れたら、その温もりがなくなり、冷たさと寂しさを感じることになるだろう。
まだ離れたくない。
そう思う。
だが、時はすぎてゆく。
時間が経っていることを桂が気にしていないか、心配になる。
引き留めるためになにか話したほうがいいのではないかと、ふと思った。
そして、言葉を探しているとき。
「なァ」
桂が話しかけてきた。
「あのふたりは元気か」
新八と神楽のことに違いない。
帰る、と言われなかったことに、ほっとする。
しかし、それを顔には出さないようにして、返事する。
「ああ、元気だ。元気すぎるほど元気だ」
「そうか」
桂が少し笑った。
その様子に、心が弾む。
単純だなと、自分でも思う。
「このまえ、知り合いから、猫を捜してくれっていう仕事の依頼が来たんだが」
知り合いとは、お咲のことだ。
お咲とのあいだにあったことを思い出した。
だが、もちろん、それには一切触れないことにする。
「神楽のヤツ、猫を追っかけて、つかまえて、そんときに猫に引っかかれて、顔に引っかき傷つけられてた。しかも、つかまえた猫は、捜してたのとはぜんぜん違う猫でさァ」
話しながら、そのときのことを思い出して、笑う。
だが。
「……銀時、おまえ、自分は怠けて、少女に仕事を押しつけ、その顔に傷がつくようなことをさせたのか」
桂はあきれきった声で言った。
「いや、別にそんなに深い傷でもなかったし、それに実際、すぐ治ったし。だいたい、俺ァ、アイツに仕事を押しつけたわけじゃねーよ。アイツがやけに張り切ってて、俺と新八を置いて、追っかけていったんだ」
「ほう」
桂は相づちを打ったが、あまり信じていないようだ。
だから。
「ホントのことだ」
付け足した。
しかし、桂の反応は薄い。
これでは話が終わる。
別の話を、と考え、ひらめいた。
「そういや、猫と言えば、アイツ、元気か」
「アイツとはだれのことだ」
「おめーが餌づけしようとしてたヤツのことだ。触らせてくれるようになったのか」
桂の背筋が真っ直ぐに伸びた。
その眼がこちらに向けられる。
やたらと反応がいい。
「いや、まだ触らせてもらえんのだが、距離は縮まった」
「へえ、どれぐれェだ」
「一歩だ」
「……それ縮まったうちに入んのか」
「無論だ。千里の道も一歩からと言うではないか」
「いやいやいや、なんか、ソレ、すげー違う気がする」
「違わん」
桂はむっとした表情になった。
正直、あきれる。
「……おめーは、昔っから、猫とか犬とかには、片想いばっかりだな」
「そんなことはない!」
むきになって桂は言い返してきた。
だが、それには取り合わない。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio