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ゆらのと

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どうして、おまえはそんなふうに思うんだ。
あのとき、そう思ったことも、思い出した。
松陽先生に死罪を言い渡した、松陽先生を殺した幕府を憎んでいるのではなかったのか。
だいたい、その件について幕府に対して憤りを感じているのは、自分も同じだ。
松陽先生の死を思うと、胸の中で怒りが燃えあがり、その炎は心を焼きつくそうとする。
圧倒的な軍事力を背景にした天人に脅されてのことであったにしても、頂点に立って義務も責任も負う立場の者である以上は、それは言い訳にならないし、同情はできない。
それなのに、どうして。
あのとき、そう銀時を問いつめたくなった。
しかし、喉から出かかった言葉は、結局、口から出すことなく、呑みこんだ。
強い反撥を感じながら、しかし、なぜか、妙に、納得してしまった。
かわいそう、でもあるな、と。
罪がないとは思わない。
罪がないとは決して思えない。
だが、たしかに、かわいそうな、気もした。
そして、同時に、銀時の懐の深さをあらためて感じた。
激しく憎んでいてもおかしくない相手であっても、ゆるせなくて当然の相手であっても、受け入れて思いやるのだから。
銀時は優しい。
自分が知っている者の中では、一番優しい。
そう思うと、胸が痛んだ。
別れた相手だ。
もう会わないと心に決めた相手だ。
思い出したくなかった。
だから、思い出したことを振り払うように、なにも考えないようにして、足早に歩く。
もうすぐ陽が落ちる。
まだまだ冬で日が暮れるのは早く、そうなれば、ますます寒くなる。
早く家に帰り着きたい。
しかし、その家にはだれもいない。
ふいに、また、銀時のことを思い出した。
銀時が通っていた頃は、合鍵を渡してあったので、桂が出かけていて留守のときにはそれで玄関の戸を開けて中に入っていた。
だれかが待ってくれている家というのは、どうしてあんなに温かく感じるのだろうか。
そう思う。
思い出して、胸がじんわりと温かくなり、そして、悲しくなった。
思い出したくなかった。
それなのに、どうして、こんなふうに度々ふとした拍子に思い出してしまうのか。
どうして、思い出すと、こんなに寂しさを感じるのか。
身を切られているような痛みがある。
離れてから、会わないと決めて会わなくなってから、自分の中でのその存在の大きさに気づいた。
否応なしに、気づかされた。
だが。
だからといって。
どうしようもないじゃないか。
そう自分に言い聞かせて、歩く。
やがて家の近くまできた。
そして、門のそばに立っているものの姿を見て、驚いた。
「エリザベス……!」
その名を呼び、駆け寄った。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio