ゆらのと
すぐそばまで行くと、立ち止まった。
ひさしぶりにその姿を見て、想いはこみあげてきたが、言葉にすることができず、ただただ眺める。
大きな瞳が見返してくる。
胸の中が温まった。
「……エリザベス、なにも言わなくてもいい。今までなんの連絡もしてこなかったことを謝らなくてもいい。俺はおまえが帰ってきてくれただけで嬉しいんだ。苦労したんだろう。つかれているんだろう。さあ、家の中に入ろう」
できるだけ優しく聞こえるように言い、右の手のひらで家の玄関のほうをさした。
すると。
「ヅラ、さっきから一人芝居して気持ち悪いアル」
「あの、桂さん、僕と神楽ちゃんがここにいることに気づいてますか」
エリザベスの近くから声が聞こえてきた。
だから、桂はそちらのほうに眼をやる。
新八と神楽が立っていた。
「ああ、なんだ、いたのか」
気づいていなかった。
「僕たちは桂さんの眼中にぜんぜん入ってなかったみたいですね」
「感じ悪いアル。私たちがエリザベスをヅラのために連れて帰ってきたのに」
不満たっぷりな様子で神楽が言った。
それを聞いて、桂は眼を丸くする。
「君たちがエリザベスを連れてきてくれたのか」
「そうアル! 依頼された仕事はちゃんとするアル」
神楽は胸を張った。
その隣で新八が決まりの悪そうな表情になる。
「ちゃんと仕事をしたと言えるのかどうか……。宇宙の旅に行ったら、偶然見つけたので」
「宇宙の旅? エリザベスは宇宙にいたのか」
「はい」
どうりで江戸を捜しても見つからなかったわけだ。
「カップラーメンの懸賞が宇宙の旅で、一時期そのカップラーメンばかり食べていたら、宇宙の旅四名様が当たって、僕と神楽ちゃんと銀さんと、そして姉上の四人で行ってきました」
「ほう」
「そしたら、訪ねた星で内乱が起きて、僕たち、それに巻きこまれてしまって」
「へえ」
「たまたま坂本さんの宇宙船が商いのために来ていて、坂本さんたちに助けてもらいながら、どうにか内乱を鎮めることができました」
「……坂本のバカまでその事件に登場したのか」
「おかげさまで本当に助かりました。しかも、坂本さんの宇宙船で地球まで送ってもらいました」
「そうか、それは良かった。しかし、その話のどこにエリザベスが出てくるんだ?」
「地球まで帰る途中、坂本さんの都合で他の星に立ち寄ったんですよ。そこで、エリザベスを見つけました」
「そうなのか」
たしかに、ただの偶然だったらしい。
「でも、ちゃんと仕事したアル!」
神楽が話に割って入ってきた。
「エリザベスは長いあいだ帰ってないから、帰るのが気まずいって、悩んでたアル。それを銀ちゃんが説得したアルヨ。ヅラが心配してるんだぞ、って」
その神楽の言葉に耳を打たれたような気がした。
「銀時が……」
つい、ひとりごとのように、その名を口にする。



