二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゆらのと

INDEX|136ページ/373ページ|

次のページ前のページ
 

二階まであがりきると、部屋に入った。
襖は銀時が閉めた。
押されて、部屋の中央近くまで進んだ。
そこで立ちつくす。
ようやく、手首をつかんでいた銀時の手が離れた。
それでも動かずにいる。
部屋の中は薄暗い。
外からは、まだ止む気配なく降り続いているらしい雨音が聞こえる。
その音が耳をしっとりと濡らすように響く。
正面には銀時がいて、やはり立ちつくしている。
じっとこちらを見ている。
いつもはやる気のなさそうな表情ばかりしているくせに、今は精悍さを感じさせる顔つきをしている。
その口は閉じられている。
なにも言わない。
ただ、そうせずにはいられないように、こちらを見ている。
「……あのとき」
沈黙を破った。
「おまえが待っていると伝えてきた日、ここにきて、待っていたのか」
どうしてそんなことを問いたくなったのか、自分でもわからない。
すると、銀時の表情が少し揺れた。
その口が動く。
「あたりめェだろ」
怒っているような、強く荒々しい口調で告げた。
やはり、そうか。
そう思った。
銀時と偶然会ってここに来るまえには、あのときここに来て待っていたはずがないと思っていた。
それなのに、今の銀時の返事はなんの抵抗もなく胸の中に落ちた。
しかも、安堵すら感じた。
だが、それとは裏腹なことを口は言う。
「俺は行かないと伝えたはずだ」
「それでも来るに決まってんだろ」
銀時はついさっきまで以上に怒った様子になった。
厳しい眼差しでこちらを見すえる。
「テメーが来る、その可能性がちょっとでもあるんなら、来て、待つに決まってんだろうが……!」
そんなわかりきったことを今さら聞くな。
そう責められているような気がした。
責められても、しかたない。
わかっていて言ったことも、あのときここに来なかったことも。
「……すまない」
眼をそらした。
うつむく。
視野に、畳が入ってくる。
畳は、銀時の身体から落ちた雨で濡れていた。
「本当にすまねェと思うんなら、俺のほしいもん、くれ」
銀時の声が聞こえてきて、つい、顔をあげた。
そちらのほうを見る。
眼が合った。
鋭く見返しながら、銀時は言う。
「俺ァ、おめーの、全部が、ほしい」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio