ゆらのと
肌に唇が落とされる。
その手が触れてくる。
大切なものに触れるように。
温もりが伝わってくる。
その想いを感じ取る。
愛されている。
そう感じる。
素直にそれを受け入れると、心に温もりが広がった。
触れ返す。
自分の中に満ちた想いに動かされて、そうせずにはいられなくて、銀時に触れた。
外からは、相変わらず、しとしとと降り続く雨音が聞こえてくる。
けれど、その雨音が遠ざかる。
心臓の強く打つ音や、吐息に、かき消された。
身体の中が熱い。
強い衝撃を求め、そこに、望みどおりのものを与えられる。
声をあげる。
感じているのは、痛みだけではなくて。
快楽があった。
それがもっとほしくて、貪欲に、動く。
「小太郎」
名前を呼ばれた。
心が震える。
胸の中に強い感情が湧きあがり、それが頭までのぼって、いつのまにか、眦から涙がこぼれていた。
内側から激しく揺さぶられているうちに、最高潮に達する。
自分の中で、銀時もそうなったのを感じた。
終わって、布団に深く身を沈める。
ふと、なにかが近づいてくる気配を感じて、眼を開ける。
隣で同じように布団に身を横たえている銀時の手が、髪に触れた。
その眼はこちらに向けられている。
眼が合った。
自分が今どんな顔をしているのか知っているのだろうか。
そう思う。
そして、そういえば、前回、実際そう聞いたことを思い出した。
いつもの二割増しだらしない顔をしている、と付け足して。
気恥ずかしかった。
それぐらい、優しい顔をしていた。
今も、そうだ。
いっそ起きあがろうかと思った。
だが、やめておく。
今だけ、おまえのものだ。
そう言ったのだから。
それに、別に、嫌ではないのだから。
むしろ、心地よさを感じる。
しばらくして。
ふと、思い出した。
「……銀時」
「なんだ」
「エリザベスのことなんだが、連れて帰ってくれて、ありがとう」
もう二度と会わないつもりだったので直接に言う機会がないと思っていたが、せっかくなので、礼を言うことにした。
「……なんか、こーゆー状況で聞きてェ名前じゃねェな」
「は?」
礼を言ったのに、なぜ不満そうにしているのか、わからない。
「思い出すのはもっとあとでいいだろ」
「礼は早くしておくものだろうが」
「いや、だから、それも、時と場合によるだろーが」
そう銀時は言い返してきて、ふいに、眉間にしわを寄せた。
「つーか、嫌なことを思い出しちまった」
銀時が起きあがり、あぐらをかいた。
口元に手をあて、なにかを深く考えているような表情をしている。
その様子が気になり、身体を起こす。
「嫌なことって、なんだ」
「……ああ」
相づちは打ったものの、銀時は答えない。
嫌なこととはなにか。
考える。
エリザベスの話をしたあとだった。
ということは、自分に関係することなのだろうか。
もしかして。
ハッとする。
「もしかして、あの脅迫状を送ってきた者が、また、なにかしてきたのか」



