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ゆらのと

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万事屋が爆破されてからこれまで、特になにかが起きた様子はなかった。
しかし、それは銀時が握りつぶしていたからかもしれない。
「いや、ちげーよ」
銀時が否定した。
だが、それで終わりにするわけにはいかない。
「では、一体なんだ。エリザベスか俺に関係のあることなんだろう?」
「……ああ」
浮かない表情で銀時は認めた。
その眼はこちらのほうを向いてはいなくて、虚空を見すえている。
「銀時」
声の調子を少し厳しくして名前を呼ぶ。
すると、銀時はちらりとこちらを見た。
「……宇宙で坂本のバカに会ったんだが」
「ああ、そうらしいな」
「そんとき、宇宙海賊の話を聞いた」
「春雨か?」
宇宙海賊春雨とは自分も銀時も関わったことがある。
春雨は転生郷と呼ばれる麻薬の密売をしていて、その件で、銀時とふたりで春雨の一派の船を襲撃して沈没させたことがあった。
おそらく春雨の者たちは恨んでいるだろう。
「いや、別のヤツらだ。まあ、春雨がまるっきり無関係なのかどーかわからねェけどな」
「それで、その別の海賊がどうかしたのか」
「そいつら、人の密売をしてるらしい」
それを聞いて、眼を細める。
気持ちのいい話ではない。
しかし、意外性はなかった。
天人たちがそういうことをしているのは噂に聞いたことがあったし、そうした宇宙規模ではなく、この国でこの国の者が人の売買をすることもある。
「対象はこの国のもんばっかりとは限らねェんだけどな。だが、この国の者も含まれてるのは確かだ。まァ、肉体労働とかさせるなら姿形はどーだっていいからな。だが、そればっかりじゃねェんだ。俺が坂本から聞いたのはそれとは別のことだ」
「別?」
「欲望の対象としてってことだ」
それは、つまり、性的あるいは嗜虐の対象ということだろう。
銀時は続ける。
「知ってると思うが、この国のもんと天人と姿形があまり変わらねェ場合もある。それに、姿形が変わってたって、欲望の対象になる場合もあるらしい」
「……そうか」
どんな反応をすればいいのか迷い、適当な相づちを打つ。
銀時は眼をそらした。
なにかを思い出しているような表情をしている。
「そんな対象にするには、天人にも好みってもんがあるらしい。だから、人によって売値が違う。それに、すでに売りに出されてるのを対象にするばかりじゃねェ。売りに出されてないもんに勝手に値をつけて、その金額につられたもんにさらってこさせようとする」
まさしく闇の世界の話だ。
聞いていて気分がどんどん重くなる。
「それで、その欲しい対象に勝手に値段をつけた、高値がついた者たちの一覧表、ってゆーか、写真入りの商品カタログみたいなもんがある。それを坂本がたまたま手に入れたらしくて、そいつを俺に見せた」
そう言うと、銀時は黙った。
眉間には深いしわが刻まれ、口は強く引き結ばれている。
よほど嫌なことを思い出したらしい。
だが、こちらとしては話の続きを待つしかない。
しばらくして、銀時は口を開いた。
「そこに、おまえが載ってた」
え、と思う。
予想外だった。
さらに、銀時は言う。
「しかも、すげェ高値がついてた」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio