ゆらのと
「……つーか、さァ」
沈黙を銀時が破った。
「そーゆー理由ぬきにしても、テメーが写真つきの値段つきで、商品みてェに載せられてるってことだけでも、ムカつくんだよ、こっちは」
銀時のほうを見る。
さっきよりは冷静な表情をしていた。
その口が、また、開かれる。
「テメーだって、あのペンギンのお化けが、そんなふうに載せられてたら、ムカつくだろ」
「ペンギンのお化けじゃない、エリザベスだ」
即座に訂正する。
そして、銀時の言ったことを想像した。
「……たしかに不愉快だな」
自分にとって大切なものが、こちらの意志をまったく無視して、売り物のひとつとして無機質に冷たく並べられて値段をつけられていたら、心が痛み、憤りを感じるだろう。
銀時が不機嫌だった理由がようやくわかった気がした。
「言っとくが、俺ァ、テメーがいま想像した何倍も、いや、何千倍も不愉快なんだからな」
「なんだ、その差は」
「テメーとアレは飼い主とペットだろ」
アレなどと呼ぶなと抗議しようとしたが、それより先に銀時が告げる。
「だが、俺にとってオメーは恋人だ」
眼を少し見開いた。
けれども、言い返さないことにする。
言い返す材料がない。
銀時の言ったとおりなのだから。
「黙ってるってこたァ、認めたってこだって見なすぜ」
勝手だと思った。
しかし、それを口には出さない。
言ったところで、じゃあ違うのかと聞かれたら、また黙るしかなくなる。
銀時の手のひらが近づいてきて、頬に触れた。
なにをするつもりなのかわかっていて動かずにいる。
唇が重ねられる。
それを受け止め、くちづけを交わす。
その行為に、気分は高まり、身体が反応する。
慣れているから、だけじゃない。
そうしたいと望む気持ちがあるからだ。
認めるしかない。
この男は自分の、恋人、だ。
ふたたび、布団に身を横たえる。
銀時が覆い被さってきた。
肌にその体温を感じる。
「……他のヤツにはやらねェ」
間近で、銀時が言う。
「だれにもやらねェ」
低い声は強い調子で続ける。
「絶対」
その吐息が肌をくすぐり、ぞくりとした。



