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ゆらのと

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どんな反応をすればいいのか、困る。
困ったが、嫌ではない。
少し笑い、なにも言わずにいる。
だが、時間は過ぎていき、それを無視するのには限度があった。
しばらくして、口を開く。
「銀時、放してくれ」
それは銀時もわかっているらしく、しかたないといった様子で、腕を引いた。
身体を起こす。
立ちあがり、布団から離れた。
そして、さっきまでの行為の後始末をする。
その途中、身体に銀時がつけた跡を見た。
後始末が終わると、脱ぎ捨てたきものを着る。
近くで、銀時も同じように身なりを整えている。
「さすがに乾ききってねーなァ」
ひとりごとのように言った。
「それはそうだろう。あれだけ濡れていたんだからな」
「まーな」
「傘を捨てるからだ」
そういえば、と思い出す。
「おまえの傘、道に捨てたままではないか」
銀時の傘を道に置き去りにしてここに来たのだった。
拾うことを、あのとき、思いつかなかった。
「あ、そーいえば」
「あのまま道に残っていればいいが……」
あまり期待はできない。
通行の邪魔になるからと排除されていそうだし、それはなくても風に飛ばされていそうだ。
「まァ、雨、結構マシになってるみてーだから、いいんじゃねェ」
たしかに外から聞こえてくる雨音はかすかなものになっている。
だが、降っているのは間違いない。
「濡れて帰る気か」
「ああ、別に雨に濡れたら溶けるってワケでもねーし」
「だが、おまえは頑丈そうに見えて、すぐに風邪をひいたりするだろうが」
幼い頃からのつき合いなので、よく知っている。
「すぐってこたァねーよ。たまに、だ」
銀時は言い返してきた。
それを無視して、言う。
「俺の傘を持っていけばいい。俺はめったに風邪をひかないからな」
めったに風邪をひかないのは事実だ。
だから、自分の傘を銀時に持っていかせるのは良い案だと思った。
しかし。
「ダメだ」
銀時に却下される。
「なぜだ」
「俺がイヤだからだ」
「それでは理由になっていない」
「理由にはなってるだろ」
「……まったく、おまえは減らず口だ」
あきれた。
そのとき。
銀時が距離を詰めてきた。
たいして気にせずにいると、すぐに距離はなくなり、その腕に抱かれる格好になる。
「銀時」
「帰るところが一緒なら、傘が一本でも問題ねーのにな」
軽く冗談のように銀時は言った。
抱きしめられる。
強すぎず、優しい。
つい、その胸にもたれかかる。
深い想いに包まれる。
満ち足りていく。
この気持ちはなにか。
ああ、と思い当たる。
幸せ、だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio