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ゆらのと

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「……おまえさァ」
間近から、銀時の声が聞こえてきた。
「さっき、俺がすぐに風邪をひいたりするって、言っただろ」
「ああ」
返事する。
「おまえも覚えているだろうが、俺は何度かおまえの看病をした」
そのときの記憶がいくつか、頭によみがえっていた。
「そーだな。子供ん頃は、松陽がアレだったしなァ」
「……松陽先生は学問にも武芸にも秀でていて、農作業も得意だったが、家事全般については、その、アレだ、大胆かつ独創性に満ちていたというか」
「はっきり、メチャクチャだったって言えばいーだろ。それで、主な被害者は俺だったんだ」
家事の中でも特に料理の腕前は破壊的で、親しい者はそれを知っているから松陽の作るものを食べることを避けていたが、一緒に暮らしていた銀時は逃げられなかった。
そのため、怠け者の銀時が家事は自分から引き受けていた。
自分の身を護るために。
だが、風邪をひいて寝こんでいたら、それができない。
松陽が銀時の看病をしている様子を近くで見ていると、他人事ながら肝が冷えた。
「あんときは、オメーが俺の看病するって言ってくれて、スゲー助かった」
「さすがに、放ってはおけなかったからな」
「子供ん頃だけじゃねェ、戦に出てからもだ」
戦に出てから、というのは、松陽の死後ということになる。
その死については触れたくないだろう。
だから、触れないことにする。
「一番近くにいるのが俺だったからだ」
「ああ、そーだ」
銀時が軽く笑った。
「俺の一番近くにいたのは、オメーだった」
抱く腕の力が少し強まったのを感じる。
「風邪ひいたときだけに限らねェ。いろんなときに、オメーは俺の近くにいた。そーゆーのを、たまに、なんかの拍子に思い出す」
銀時の声は徐々に真剣なものになった。
「思い出したら、そばにいてほしくなる。その瞬間ってことだけじゃなくて、その先も、ってことだ」
「銀時」
名を呼んだ。
しかし、銀時は話を続ける。
「新八や神楽はいつか巣立ってく。それでいいんだ。だが、そーゆーのじゃなくて、一生、一緒に歩いていくのは、おまえがいい。俺ァ、おまえと歩いていきてェ」
そして。
「俺と一緒に生きてほしい」
そう告げた。
その言葉に、胸を打たれた。
なにも言えなくなる。
「返事は今じゃなくていい。つーか、今じゃねェほうがいい。今だったら、まえと同じで、いい返事はしねェだろ」
まえと同じ。
先のことを考えてほしいと言われたときのことだろう。
たしかに、今はあのときと似たような返事しかできない。
「いつか状況は変わる。てゆーか、絶対ェ、変えるからな」
強い調子で銀時は言った。
「だから、それまで、考えといてくれ」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio