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ゆらのと

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その冊子を、桂のことが載せられていた頁を、思い出しただけで、胸くそが悪くなる。
桂には、そうした冊子があり、そこに桂も掲載されていたことを話した。
だが、その内容について、すべて話したわけではない。
省略したのは、話したくなかったからだ。
口にするのも嫌だった。
桂について掲載された頁には、桂の写真と簡単な情報が載せられ、一生遊んで暮らしてもおつりがたっぷり出るような金額が提示され、そして、備考欄に注意書きがあった。
頭の中に、その注意書きが鮮明によみがえる。
できる限り傷のない状態であること。大きな損傷がある場合は、報酬を減額、損傷の程度によっては、買取不可にする。
強姦・調教の類は一切しないこと。その形跡がある場合も、報酬を減額する。
その文面に、反吐が出そうになった。
桂のことを完全に商品としてしか見ていない。
だから、一番良い状態で調達することを要求している。
手に入れた桂を高く売りつけるために。
ふざけるな。
はらわたが煮えくりかえる。
しかし、冷静になって考えてみると、つじつまが合う気がした。
攘夷志士にとっては輝ける星である桂と、同じ男である自分が、深い関係にあることが気に入らないから、仲を裂こうとした。
あの脅迫状から、そう読み取った。
だが、そんな理由で脅迫状を送った挙げ句に万事屋を爆破までしたというのより、組織が大きな利益のためにしたというほうが、しっくりくる。
宇宙海賊玄夜は銀時に報復したいと思っていた。
そして、その件で、銀時の実力を知っている。
桂本人が強く、また仲間も多くいるため、ただでさえ桂をつかまえるのは難しいのに、その上、人身売買組織をつぶした者と恋人関係にある。
まず、その障害となるものを遠ざけようとしたのではないか。
同時に、桂の身体から男の痕跡を消したかったのではないか。
あの冊子の桂についての頁に提示されていた金額は、驚くほど高額だった。
しかし、あれは、玄夜が買い取る価格だ。
それはこのぐらいで売れるだろうと適当に付けられたものではなく、すでに買い手がいるからこその金額なのだろう。
その買い手は、もちろん、あの冊子に載っている価格よりも高い金額を玄夜に支払うのだろう。
だから、玄夜にしてみれば、時間も金もかけるだけの価値があるだろう。
だが。
その推測が合っているにしても、まだなにかが足りないように感じた。
「銀さん」
呼びかけられて、ハッとした。
つい、お咲の存在を忘れて、考えこんでいた。
「やっぱり、私が銀さんたちを巻きこんだから、あんなことに」
お咲の顔は暗く沈んでいる。
「いや、そーとは限らねェだろ」
それに、実際そうだとしても、その場合は、それだけが理由ではないだろう。
玄夜にとっては、報復よりも、利益のほうに重点を置いているはずだ。
だが、それについては桂のことに触れることになるので、お咲には言わないでおく。
その代わり。
「もし、そーだったとしても、アンタはなにも悪くねェよ。アンタは被害者だ」
そう、お咲に告げた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio