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ゆらのと

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お咲の強張っていた表情がふっとゆるむ。
「銀さん……」
「……てゆーか、そんな宇宙海賊とかの情報、どこから聞いたんだ」
ふと気になって、銀時はたずねた。
宇宙海賊は闇の世界に属するものだ。
元攘夷志士で今は宇宙で手広く商売をしている坂本にしても、あの冊子はたまたま手に入れただけにすぎない。
宇宙海賊がだれかに報復しようとしているなどという闇の世界の危険な情報が、甘味処の従業員の耳に届くことは、通常なら、ありえないだろう。
お咲は答える。
「昔の知り合いから、聞いた」
その頬にかすかな笑みを浮かべる。
「蛇の道は蛇、って言うでしょう?」
その笑みに、妙な強さを感じた。
過酷な現実を生き抜いてきた者の強さ。
あるいは、捨てるもののない、開き直った者の強さ。
お咲は、ワケあり、だ。
それも、銀時がこれまで想像していたのよりも、もっと闇の色の濃いワケありなのかもしれない。
しかし。
「アンタさァ、ここで働いてるってこたァ、もうそういう世界から離れるってことだろ」
銀時は淡々と話す。
非難にならないよう、声が厳しくならないようにする。
「なら、もう、その昔の知り合いとも関係を断ち切れ」
そう言いながら、思った。
もしかして、お咲はその昔の知り合いと会ったときにたまたま玄夜の情報を聞いたのではなく、万事屋の爆破に関する情報を得たくて昔の知り合いに会ったのかもしれない。
お咲はまた微笑んだ。
「そしたら、もう、この件のこれ以上の情報は入らなくなるわよ?」
銀時はその眼を見すえる。
「かまわねェよ」
きっぱりと告げた。
闇の世界と決別して生き直すつもりなら、それがどんなに簡単なことであっても、過去のものとつながりを持たないほうがいい。
「……ここに来るまえ、あの女の子を助けてるのを見かけたときも思ったけど、銀さんって罪つくりよね」
そのお咲の口調はやわらかかった。
銀時は眼を細める。
「俺ァ、できたら、アンタとは友達になりたいんだが」
「無理」
即座に、お咲は返事した。
「私が、無理」
「そーかィ」
それならば、しかたない。
残念だ。
本気でそう思ったが、それは言わないでおくことにする。
深追いするべきではない。
「でも、銀さん、これだけは覚えておいてほしいんだけど」
顔から笑みを消し、お咲は真剣な表情で言う。
「私は本当に銀さんたちには感謝してる。恩義を感じてる。それと恋愛感情は、別々のこと。だから、たとえ危険なことであっても、私は銀さんたちを助けたいのよ」
それが、お咲の仁義なのだろう。
銀時は少し笑った。
「ああ、わかった」
しかし、この件で動いてもらうつもりは、まったくない。
お咲は微笑んだ。
おそらく、その銀時の気持ちを察した上で。

「……銀時、おまえも水を飲むか」
机の近くに座っている桂が聞いてきた。
「飲む」
そう返事して、銀時は布団から身体を起こした。
首筋をボリボリとかきながら、机のあるほうに行く。
途中で、きものを拾い、それを羽織った。
そのあいだに、桂は水差しを湯飲みに傾けている。
銀時は桂のそばに腰をおろした。
あぐらをかく。
桂は素肌に長襦袢一枚を軽く身にまとっている。
色っぽい姿ではあるのだが、きっと本人はそんなことには無頓着だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio