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ゆらのと

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いつもの船宿である。
呼び出したら、桂はあっさりと応じた。
もうあきらめた、と言った。
なにを、と聞くと、おまえには勝てない、と不機嫌というか決まり悪そうな表情で答えた。
まあ、そりゃあ、こっちは年季が入ってるからなァ。
そう思いながら、机の上に置かれた湯飲みを持ちあげ、あおる。
なにしろ二十年以上だ。
ほんの少しでも迷いがあるなら、悪いが、そこにつけいらせてもらう。
水を飲み干すと、湯飲みを机に置く。
コトッと音がした。
「……良いことがあったんだ」
ふと、桂が言った。
「へえ」
「なんだ、そのどうでも良さそうな返事は」
「いや、攘夷志士のいいことって、どーなんだろーなーと」
「攘夷関連じゃない。というか、おまえもかつては志士だったのだから、攘夷関連で良いことがあったら、それはおまえにとっても良いことだろうが」
「いやいやいや、俺、もう立場違うし」
「銀時、貴様には一貫性というものがないのか!?」
「柔軟性も必要だろ」
特にオメーみてェな石頭には、と続けようとして、やめた。
石頭ではない桂は、もう桂ではない気がした。
それに。
「てゆーか、話、なんか、それてねーか」
そう指摘すると、桂はハッとした表情になった。
「ああ、そうだった。実はだな、また距離が縮まったんだ」
「……もしかして、あの猫との距離か」
「ああ」
「どうせ、また、一歩だけなんだろ」
「だが、着実に距離は縮まっている! 触らせてもらえる日は近い……!」
桂は拳を握って力説する。
その頭には、猫の毛並みや肉球が浮かんでいるに違いない。
コレが党首で本当にいいのかと、攘夷党の党員たちに聞いてみたくなった。
「……ところで、銀時、おまえのほうはどうなんだ」
「なにが」
「近況だ」
さりげなく聞いてきた、桂のその声音は、さっきまでとは違い、かすかに真剣味を帯びている。
「なにか大きな変化はないか」
まるで探っているようだと感じた。
実際、探っているのだろう。
「そーだなァ、まァ、いつのまにか妙な事件に巻きこまれたりはしてるが、いつものことだからな。別に、大きな変化はねェよ」
「そうか」
軽く相づちを打つと、桂は眼をそらした。
その横顔を見つつ、なにを考えているのだろうかと思う。
桂はどこまで把握しているのだろうか。
お咲から聞いたぐらいの情報は、もうつかんでいるのだろうか。
ありえる。
攘夷党の党首という立場もあって、桂は情報通だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio