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ゆらのと

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「……わかった」
気圧されたように間があって、男は返事した。
それで会話は終了した。
桂は切った携帯電話を机に置いた。
机の上で、手のひらを強く握りしめる。
新八を巻きこんでしまった。
敵がこんな手を使ってくるとは予想しておらず、事前に察知して対応策を取っていなかった自分を恥じる。
さらに、新八に対して申し訳ないと思う。
新八だけではない、その姉のお妙や、仲の良い神楽、そして銀時に、心の中で詫びる。
だが。
必ず助ける。
その決意を胸に刻みつける。
これから敵の指定した場所に行く。
おそらく奴らは桂との戦いを避けるだろう。
奴らは桂の強さを知っているはずだ。
それに、奴らの目的が報復ではなく商売で桂を高値で売り飛ばすことであるなら、桂に傷がついて値が下がるようなことは避けるだろう。
そのため、桂を直接に襲ってこず、こんなまわりくどい手を使ってきたのだろうとも、推測する。
だから、桂がおとなしく従えば、新八はすでに無傷ではないだろうがそれ以上の危害を加えられることなく解放されるだろう。
指定した場所を考えると、奴らは桂の捕獲後はすぐに宇宙船に乗って地球から離れるつもりなのではないか。
それはつまり、新八から敵が遠ざかるということでもある。
自分と入れ替わりに、新八を家や万事屋にもどすことができるはずだ。
しかし、その代わりに、自分はどうなるのか。
宇宙海賊に拘束され、江戸どころか地球から離れ、遠い星へとつれていかれ、高額で売り飛ばされる。
売り飛ばされたあとのことを考えると、怯む気持ちがまったくないとは、さすがに言えない。
けれども。
一昨日、銀時に呼び出されて、寺で会ったときのことを思い出す。
抱きしめられた。
腕の中で、その温もりを、想いを、感じた。
大切に想われている。
そして、自分も大切に想っている。
心が強くなった気がした。
すべてを、覚悟する。
桂は机の上から手をおろし、立ちあがった。

漆黒の空には、半円よりもややふくらんだ白銀の月が浮かんでいる。
外の空気はひんやりとしていて、桂の体温を下げていく。
桂は倉庫の建ち並んでいるあたりを急ぎ足で歩いていた。
やがて、指定された場所が見えてきた。
宇宙船らしき大きな船が川に停泊していて、それを背景にして、浪士風の男たちが数人と天人が三十人ほど立っている。
それだけではない。
「桂さん!」
縄で縛られた新八が、浪士風の男に抑えられながら、叫んだ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio