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ゆらのと

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桂の心がギリッときしむように痛む。
こちらに向けられている新八の顔には殴られた形跡があった。
「新八君」
足を止め、呼びかける。
だが、そのあとに言葉を続けることはできなかった。
無事かとも、手荒なことをされなかったかとも、聞けない。
手荒なことをされたのは一目瞭然なのだから。
新八は揺るぎのない真っ直ぐな視線を向けている。
「桂さん。僕はちょっと殴られただけです。だから、大丈夫です」
こちらの気持ちを察したようなことを、りりしい顔つきで、きっぱりと言った。
良い少年だ。
そう桂は思う。
頭に、神楽の姿も浮かんだ。
銀時のもとに彼らのような者たちがいることを嬉しく感じる。
こんな状況ながら、桂の心は少しなごむ。
「だが」
新八を抑えている男が口をはさむ。
「アンタがおとなしく俺たちの言うとおりにしなけりゃ、コイツはどうなるかわからねェぞ」
桂に向けて、ニヤリと笑って見せた。
電話をかけてきたのは、この男だろう。
胸の中に、どす黒い感情が満ちた。
しかし、その感情を抑えこみ、口を開く。
「約束どおり、ここに来た。次はどうすればいい」
「その腰に差した刀をこっちに寄こせ」
そうくるだろうなとは予想していた。
桂は冷静に手を腰にやり、刀を鞘ごと引き抜いた。
その刀を奴らのほうに放り投げる。
宇宙海賊の一味らしい天人が落下点へと走り、桂の刀を受け止めた。
天人は桂の刀を手にして仲間のもとにもどる。
さらに、桂の刀を地に置いた。
他の天人が子供の身体ほどもありそうな大きな鎚を持って近づき、桂の刀のそばで足を止めると、鎚を振りあげた。
桂の刀に、鎚が振り下ろされる。
壊れる音があたりに響いた。
さっき桂の刀を受け止めた天人が、今度は刀を拾いあげる。
そして、刀を桂に見せつけた。
桂の刀は無惨に折れている。
すでに渡してしまったものだ。
そこまでしなくてもいいはずであるのに。
奴らは桂の刀を折ることで、桂の心までも折ってしまいたかったのかもしれない。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio