ゆらのと
ハッとして、桂はそちらのほうを向く。
新八は男に投げ飛ばされたらしく、倉庫のあるほうへと前のめりに倒れそうになっていた。
「新八君!」
しかし、新八は持ちこたえて、さらに、桂をふり返る。
眼が合った。
桂は言う。
「早く、行け」
一刻も早くこの場から立ち去れと、告げた。
「桂さん!」
けれども、新八は立ち止まったまま、食い入るようにじっと桂を見ている。
だから。
「行け」
再度、桂はうながした。
そのとき、ふいに、銀時の姿が脳裏に浮かんだ。
新八はここから去ったあと、この件を銀時に話すに違いない。
銀時はどう思うだろうか。
こうするしかなかった。
そう桂は思う。
だが、銀時はこの桂の選択を喜ばないだろう。
怒るだろうか。
あるいは。
幼い頃の記憶がよみがえってきた。
自分の背丈と同じくらいの高さのススキの中で、銀時に告げた。
俺はおまえを絶対に捨てない、と。
約束したのだ。
銀時。
胸の中で呼びかける。
俺はおまえを捨てるわけじゃない。
それをわかってもらいたい。
しかし、今ここでそれを口にしたところで、何になる。
もう二度と会うことはできないかもしれないのに。
だから。
桂は口を開く。
「新八君、銀時に伝えてくれないか」
今の自分の一番の望み。
「幸せになることを願っている、と」
幸せになってほしい。
大切に想っているから。
たとえその幸せの中に自分がいなくてもいい。
ただ、幸せになってほしいと、願う。



