ゆらのと
近づくにつれ、その船の大きさに圧倒されそうになる。
宇宙船としてはめずらしくない大きさではあるものの、これに乗ってからのことを思うと、その存在がやけに大きく見えてしまう。
やがて、タラップに差しかかる。
タラップには背の高い天人がこちらのほうを向いて立っていた。
全体的に細長い印象の天人だ。
しかし、威厳がある。
この宇宙海賊の頂点に立つ者なのかもしれない。
細いつり目がじっとこちらを見ている。
ふと、そのこけた頬に笑みが浮かんだ。
「我らの船に、ようこそ」
歓迎するように、それまで組んでいた両腕を胸のまえで開いて見せた。
だが、桂は見返しただけで、返事せずにいる。
彼らにしてみれば大金が手に入る標的をつかまえることができて嬉しいだろうが、こちらは歓迎されても嬉しくはない。
天人は返事がないことをまったく気にしていない様子で、ふたたび口を開いた。
「おとなしくしていれば丁重に扱いますよ。あなたを傷つけることは私たちの本意ではありませんから」
傷つけることは望んでいない。
それはそうだろう。
傷をつければ値が下がるかもしれないのだから。
それに、傷つけたくないのは売るまえまでのことだろう。
自分たちの手から離れたあとは、傷がつこうが、死ぬことになろうが、どうでもいいはずだ。
桂は皮肉のひとつも言いたくなったが、それでは挑発に乗るようだと判断し、無表情を天人に向け続ける。
「それにしても」
天人の眼が桂の顔から離れる。
その視線の先は、桂の手首へと移動した。
手かせを、見ている。
「狂乱の貴公子という異名を持つあなたが、そんなふうに手かせをはめられた上、おとなしく従っているとは」
そこで天人は口を閉ざした。
それ以上はなにも言わない。
その顔に浮かんでいるのは、冷笑。
愚かだ、と言われているような気がした。
奴隷のように手かせをはめられ、おとなしく従っているのは、情、によるものだと彼らは知っている。
それで桂が動くと見たからこそ、新八を人質にするという手段をとったのだ。
利益のために平気で人を傷つけたり殺したりする彼らにとっては、バカバカしいことなのかもしれない。
その嘲りを感じ取り、けれども、桂は表情を崩さず、胸を張ったまま、それを受け止めた。



