ゆらのと
ぼうぜんと、名を呼んだ。
どうして。
電話を。
まさか、もう新八と会ったのか。
そんなはずは。
ここから万事屋までの距離を考えると、新八が全力疾走したところで、まだ道の途中だろう。
ありえない。
新八が万事屋に到着していないなら、どこかで銀時に連絡したのか。
電話をかけたのか。
だが、縄で縛られていた。
しかし、その縄をどうにかしてほどいたのかもしれない。
だれかに助けを求めたのかもしれない。
それとも。
あの男は新八が明後日までもどらなくてもまわりの者たちは心配しないだろうと言っていたが、銀時は異変を感じ取って新八を捜していたのかもしれない。
そして、銀時に知らせようとしている新八と、新八を捜している銀時が、ここと万事屋の中間地点で合流したのかもしれない。
あるいは。
可能性は低いが、新八からこのことを知らされたわけではなくて、それ以外のことが理由で、たまたま、今、電話をかけてきたのかもしれない。
いろいろなことが頭を去来する。
推測ばかりだ。
状況がわからない。
銀時はどこまで知っているのだろうか。
驚き、戸惑い、そして、うかつに触れたくないという思いから、桂は名を呼んだきり、黙りこんだ。
「時間がねェから、これだけは覚えとけ」
銀時がぶっきらぼうに言う。
「俺ァ、必ず、おまえを助けに行く」
語気荒く、強い意志に貫かれた声で、告げた。
桂が囚われの身であることを知っているのだ。
もちろん、新八から聞いたのだろう。
ならば、知っていることを前提に話せばいい。
「バカなことを言うな」
桂は拒否する。
「俺はこれから江戸どころか地球から離れて、どこか遠い星につれていかれる。助けに来られるわけがない」
窓の外を見た。
夜の景色の中には、だれもいない。
さっき見かけた数人の天人たちはすでにこの船に乗りこんだのだろう。
タラップは格納されただろう。
銀時がこちらに急行していても、もう、間に合わない。
「だから、助けに来なくていい」
「バカなこと言ってんのはテメーのほうだ」
即座に、銀時は低くうなるように言い返してきた。
「テメーがどれだけ遠い星につれていかれようが、絶対ェ、助ける」



