二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゆらのと

INDEX|177ページ/373ページ|

次のページ前のページ
 

強くあらなければと思う。
弱い部分なんか、だれにも見せたくない。
虚勢でも、フリでもいい、自分の外からは強く見えるようにしていたい。
強くありたい。
強くなりたい。
甘えたくない。
けれど。
そうやって打ち立てた壁のようなものが、崩れた。
返事ができない。
銀時を止めるべきだ。
わかっている。
だが、止めるために口を開けば、そこから出る声が震えてしまう気がした。
そんな声、銀時に聞かせるわけにはいかない。
逆効果になるだけだろうから。
「てめーの身を捨てるようなマネはしないでくれ。その身は、俺にとっちゃ、なによりも大切なもんだ」
胸の中で、記憶がひらめく。
幼い頃からよく一緒にいた、ともに危機を乗り越えた、励まされた、助けられた、その相手の強い残像。
「絶対ェ、助けに行く」
銀時は断言した。
そして。
「じゃあ、時間がねェから、切る」
「銀」
銀時、待て。
そう止めるつもりだったが、名前すら言い終わらないうちに、電話を切られた。
桂は右手にある携帯電話をじっと見る。
これにさっき銀時がかけてきた携帯電話の番号が記録されているから、かけ直すことができる。
かけたところで、銀時が出るかどうかわからないが。
それでも、やってみる価値はあるだろう。
しかし、電話をかけて、なんと言えばいい。
どうすれば銀時を説得することができるだろうか。
身を捨てるようなマネはしないでくれ、と言われた。
もちろん、桂にしても、そんなことはしたくはない。
だが、そうせざるを得ない状況になることを覚悟している。
それを銀時が受け入れるとは思えない。
悩む。
そのあいだも時間は過ぎていく。
ふいに、甲高い音があたりに響き渡った。
桂はハッとして、顔をあげる。
すると。
「まもなく出発します。持ち場を離れている場合は、すぐにもどってください」
船内放送だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio