ゆらのと
強烈な反発と嫌悪が全身を支配する。
だが、きっとそれはこの男がわざとそうなるよう仕向けたことに違いない。
嫌がる姿を見て、楽しんでいるのだ。
冷静になれ、と桂は自分に言い聞かせる。
この男を喜ばせたくない。
だから、どんな感情も顔に出すな。
声も聞かせるな。
「花を散らすのは満開のときがいい」
男が楽しそうに言った。
そして、その身体が離れていく。
「トアラ、この者を部屋につれていけ」
打って変わって冷たさすら感じさせる声で、男が命じた。
トアラと呼ばれた女の使用人は男に向かって頭を下げ、それから無表情でこちらに近づいてくる。
そばまでくると、トアラは足を止めた。
男がふたたび口を開く。
「ここから逃げようなどとは思わないように。この屋敷は外から忍びこむのも困難だが、外へと逃げるのも困難だ。それに、仮にこの屋敷から逃げだすことができたとしても、私から逃げきることはできない。私には金があるが権力もある。おまえがこの星から離れる手段を封じてやるし、おまえをとらえて私に差しだすよう国中に手配してやる」
また楽しそうに話し、自信たっぷりに笑った。
男はあの長身の宇宙海賊のほうに手を差しだす。
その手のひらの上に、宇宙海賊はなにかを置いた。
鍵だ。
手かせの鍵だ。
その鍵を男はトアラに渡す。
トアラは鍵を受け取ると、また頭を下げた。
そして、桂のほうを見る。
「それでは、ご案内いたします」
丁寧な口調で、しかし血の通っていないような声で、告げた。
うしろから拘束していた宇宙海賊が離れたのを、桂は感じた。
しかし、左右にいる宇宙海賊は桂をつかまえたままでいる。
トアラは彼らを一瞥した。
「私ひとりで大丈夫です」
「だが」
「先ほど我が主が言いましたとおり、逃げることはできません」
そう断言した。
逃げようとして逃げられなかった者を何度も見たことがあるような様子だ。
ようやく左右の宇宙海賊たちから解放される。
トアラにうながされ、桂は歩きだそうとした。
そのとき。
「おまえは私のものだ」
男がさっき告げたのと同じことを繰り返した。
さらに。
「桂小太郎」
名前を呼んだ。
その声が名を呼ぶのを聞き、桂はぞっとした。



