ゆらのと
桂はトアラに続き、扉の向こうへと足を踏み入れた。
天井の高い広い部屋である。
中を見て、驚く。
声はあげなかったが、息をのんだ。
立ち止まり、あたりを見渡す。
ここは一体……?
ぼうぜんとする。
だが、トアラが足を止めないので、桂は止めていた足をふたたび動かし始めた。
部屋の中を進んでいるというよりも、道を歩いているようだ。
それも大通りだ。
両側には格子が続いている。
格子の向こうには座敷があり、その畳の上には、華やかなきものを着た女や男がいた。
女も男も、この国の者ではないようだ。
その髪もその眼も黒い。
桂と同じように。
おそらく、皆、日本人だ。
宇宙海賊につれてこられ、この屋敷の主に売り飛ばされたのだろう。
この部屋がなにを模しているのかわかる。
遊郭だ。
格子のある座敷は張見世、そこにいる者たちは遊女だ。
それらは、あくまでも真似をしたものであって、本物とはいろいろと違う。
しかし、異様だと桂が感じるのは、そうした違いだけが理由ではない。
格子の合間から、女の細い腕が伸びてきた。
その指先が桂に向かって揺れる。
桂は女の顔を見た。
格子の向こうで、女の紅い唇が動く。
「薬を……」
ぼんやりとした表情で言った。
その眼はうつろである。
正気を失っているように桂には見える。
それはこの女だけではない。
格子の向こうにいる者の多くが、そうだ。
なにもないところを眺めている者、ひとりでおかしそうに笑っている者、きものがひどく乱れてあられもない格好をしている者など、正常とは思えない姿が眼につく。
異様な光景である。
いつのまにか、桂は右の手のひらで口元を覆っていた。
背筋をぞっと寒気が駆けあがるのを感じた。



