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ゆらのと

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胸が痛くて、ひどく痛くて、その痛みで、ハッと銀時は眼をさました。
頭にはまだ鮮明にその光景が浮かんでいた。
あれは夢。
だが、現実にあったこと。
夢ならば時間が経つにつれ淡くなってやがて消える。
けれども、これは違う。
自分の中に刻みこまれている消えない記憶だ。
だからどうした。
こんな夢、あれから何度見たか。
何度も見た。
だが。
銀時は身体を起こした。
布団から出る。
やめておけ。
頭はそう止めたが、身体は動き続けた。
着替えて部屋の外に出て、押し入れで寝ている神楽を起こさないように気配を殺しつつ応接間兼居間を通り過ぎ、玄関へ行き、そして家から出た。
外は冷え切っている。
肩をぶるっと震わせた。
引き返せ。
頭は言った。
けれども、足は階段をおりていた。
かぶき町の道を進み、やがて、目的地に着く。
一軒家の門のまえだ。
桂の隠れ家だ。
門にある呼び鈴は押さずに玄関のほうへ行った。
そして、右腕をあげる。
玄関の戸を拳で何度も打ち鳴らした。
やがて、格子戸の磨りガラスの向こうで灯りがともされた。
右腕をおろす。
土間を急ぎ足で歩く音がして、戸の鍵が開けられる音がして、やがて戸が引かれた。
明るい玄関に桂の姿があわられる。
「なにかあったのか」
柳眉をひそめ、堅い表情をしている。
銀時はなにも言わず、半歩まえに足を踏み出した。
距離が縮まる。
押されたように桂は身を退いた。
行く手をふさぐものがなくなったので、銀時は家の中に入る。
「銀時」
桂が呼びかけてきた。
しかし、そちらのほうを向くことすらせずに銀時は土間を進み、式台のまえでブーツを脱ぎ捨てる。
背後で、戸を閉める音がした。
それを聞きながら、銀時は式台をあがる。
向かって右とつきあたりは壁だ。
このまま少し進んで左に折れれば部屋があるのだろう。
「銀時」
土間で草履を脱ぐ音がした。
「一体なにがあったんだ」
桂が近づいてくるのを感じる。
だが、そちらのほうは見ない。
頭にはさっき夢でよみがえってきた過去の光景があった。
現実にはここにはない光景。
けれどもあまりにも鮮明で、胸に迫ってくる。
過去が問いかけてくる。
なぜ、こんなことに。
なぜ、護れなかったのか。
自分は生き残って。
「銀時」
どうして。
問うてみても、答えは返ってこない。
胸が締めつけられるように痛い。
のどに渇きを感じた。
カラカラに渇いている。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio