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ゆらのと

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あらがい、けれども押しもどせなくて、後じさる桂のうしろで音がした。
背中を壁に打ちつけたらしい。
これでもう一歩もさがれないだろう。
桂は顔をあげ、こちらのほうを見た。
強い眼が向けられる。
似ている、と思った。
攘夷戦争終結後に去るまえの状況に似ていると思った。
あのとき、潜伏先の屋敷の茶室の壁に、やはりこんなふうに桂を押しつけた。
そして、無理矢理にくちづけた。
桂がハッとした表情になり、顔を背ける。
どうやら桂もあのときのことを思い出したらしい。
「……なァ」
呼びかける。
「てめーはあんときのことをどう思ってるんだ」
再会してから今まで一度もあのときのことに触れたことがなかった。
まるであんなことはなかったかのようだった。
桂は再会したばかりのとき、攘夷党の同士たちや新八や神楽のいるまえで、銀時のことをこう言った。
戦が終わるとともに姿を消した、と。
「答えろよ」
桂が黙っているので、銀時は返事を求めた。
これまで触れられずにきたあれは、桂の中でどう処理されてきたのだろうか。
「……それは」
桂は重い声で言う。
眉根を寄せ、苦しそうな表情をしている。
答えに困っているように見える。
「……戦に負けて、気が動転していたのだろうと」
なるほど、と思った。
軽く鼻で笑う。
やはり桂には伝わっていなかったのだ。
自分の想いは、ほんのひとかけらですら。
「あいにくだが、そいつァ間違いだ」
手を桂の顎のほうにやる。
「ぜんぜん違う」
顎をつかんで、こちらのほうを向かせる。
桂が眼を見張った。
「銀……」
「俺は」
桂が呼びかけるのをさえぎって、告げる。
「おまえのことがずっと好きだった」
これまでずっと胸の奥底にしまいこんでいたことを、ようやく口に出した。
いつからなのかはわからない。
最初からだったような気もする。
それなら、出会ったばかりの頃からなら、ちょうど二十年だ。
二十年間、胸の中に押しとどめていたことを、やっと告げた。
「あれはそういうことだ」
勘違いされるのも、都合のいいように解釈されるのも、もう嫌だ。
自分から去って、それで忘れられると思っていた。
時が経てば、一緒にさえいなければ、この長く胸の中にあった強い想いもいつか薄れて消えていくのだろうと思っていた。
それが、消えなかった。
思い出さないようにした。
思い出さないようにした、だけだった。
忘れられなかった。
想いはずっと胸の中にあった。
離れているのに。
もう二度と会わないかもしれないのに。
それなのに、あった。
あり続けた。
その事実に打ちのめされた。
そして、再会した。
再び会って、それで変わることもなかった。
もう抑えるのは無理だった。
押しつけるのは自分のわがままなのは、わかっている。
だが、どうしようもない。
じっと桂を見て、返事を待った。
桂が口を開く。
「冗談だろう?」
頭に血がのぼった。
イラ立った。
顎から手を放し、その手を拳にして、壁にガンッと強く打ちつける。
「テメーには、俺が、冗談言ってるように見えるのかよ……!」
こみあげてくる怒りを吐き出した。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio