ゆらのと
神楽はうなずき、新八とともに家の中に入ってくる。
ふたりを居間に案内した。
座布団を勧めて、ふたりがそこに座ると、桂は台所に行った。
台所で茶をふたりぶん淹れる。
それを盆に乗せて、居間にもどった。
湯飲みをそれぞれのまえに置く。
だが、ふたりは湯飲みのほうに手を伸ばさなかった。
ふたりとも、その手は膝に置かれている。
桂は机をはさんで向かい側に正座し、黙っているふたりを眺める。
神楽は泣くのをこらえるようにうつむき、新八は重い表情をしている。
「……なにがあったんだ」
少ししてから、桂はゆっくりと穏やかな声で聞いた。
すると、神楽は顔をあげた。
「銀ちゃんが」
けれども、その続きは言わず、また顔を伏せてしまう。
その頬に涙が流れている。
理由は銀時であるらしい。
一体なにがあったのだろうか。
桂は新八のほうに眼をやる。
その視線を受け止め、新八はうなずいた。
「僕たち、銀さんに解雇されたんです」
新八は説明する。
「三日まえぐらいから、銀さん、機嫌が悪そうだったんですが……」
三日まえといえば、河原で銀時と話をした日である。
その前日の深夜に銀時はこの家を訪ねてきたのだった。
「気にはなったんですが、あまりはっきりしたものじゃなかったんで、僕も神楽ちゃんもいつもどおりにしていました」
機嫌が悪かったのは、戦の夢を見たせいか、それとも桂にふられたせいか。
あるいは、どちらもか。
「昨日の夕方、僕たち三人でエリザベスを捜してたら、倒れている女のひとを見つけて」
三人がその女性を介抱していると、ガラの悪い男たちがやってきた。
男たちは刃物をチラつかせながら、女を渡せと言った。
「なんだかよくわかりませんでしたが、あのひとたちの言うとおりにしちゃいけないと思いました」
三人が断ると、男たちは襲いかかってきた。
もちろん三人は応戦し、結局、男たちは退散した。
三人は、ぐったりしていた女性を抱きかかえるようにして万事屋に連れて帰った。