ゆらのと
そして、今朝、少し元気になった女性から事情を聞いた。
女性は人身売買組織にさらわれ、売り飛ばされるまえに、隙をついて逃げだしたのだという。
「警察に行きましょうと勧めました。でも、警察内部にその組織と通じているひとがいるらしくて、信用できないから嫌だと断られました」
女性が警察に行けば、内通している者から組織に連絡が行き、逃げられるだけだと。
そうなれば、組織にとらわれている人々がどうなるかわからない。
それに、その女性もそうらしいのだが、組織がさらったのは家出をしてきたとかで警察に関わりたくない者ばかりだった。
「だから、逃げられたのは良かったけど、どこに助けを求めていけばいいのかわからなかったって、泣いてました」
三人は、とらわれの身をなっている者たちを助けだすために人身売買組織の拠点に向かうことになった。
その拠点はまるで軍事要塞のように警備が厳重だった。
何度も危機的状態に陥りながらも、やがてその組織の頂点に立つ者のいるところにたどりついた。
そこには護衛の者たちもいた。
腕ききの者ばかりだった。
しかも、あたりまえのことながら彼らはその拠点のことをよく知っていた。
地の利という点では彼らのほうが万事屋三人よりも有利だった。
万事屋三人は始めのうちは苦戦していたが、やがて形勢は逆転しつつあった。
そんなときに、せっぱ詰まった護衛の一人が爆弾を使用した。
その爆弾は新八と神楽のいるほうに投げられた。
とっさに逃げたが、周囲の物が破壊され、瓦礫がふたりの身体に降りかかってきた。
「逃げなきゃって思って、動いて、でも、避けきれなくて、なにかがぶつかってきた衝撃があって」
新八は気を失った。
あとで知ったことだが、神楽も同じだったらしい。
身体を揺さぶられ、銀時の呼ぶ声が聞こえてきて、新八は眼をさました。
足が大きな瓦礫の下にある状態で倒れていた。
おそらく、足だけでなく身体の大部分は瓦礫の下にあったところを銀時が引きずりだしたのだろう。
すぐ近くに神楽が横たわっていた。
新八が意識を取りもどすと、銀時は神楽を起こした。
幸いにも、ふたりとも軽いけがを負っただけだった。
「でも、銀さん、一瞬ほっとした顔をしたけど、そのあと、無表情で。なんだか、怖いぐらい無表情だったんです」
三人は組織にとらわれていた者たちを全員解放した。
そして、新八と神楽は銀時とともに万事屋に帰ろうとした。
そのとき、銀時はふたりに言った。
「テメーらは役立たずで、足手まといになるだけだから、いらねェ、って。今日このとき限りで解雇するって」