ゆらのと
それを聞いて、新八も神楽もぼうぜんとした。
次に、冗談だろうと銀時に言った。
けれど。
「冗談なんかじゃねェって、きっぱりと言われました。それから、もう解雇したんだからついてくんな、とも言われました」
銀時はふたりに背を向けて歩きだした。
だが、新八と神楽は銀時を追った。
そして、追いついたとき。
「ついてくるんじゃねェって言っただろ、って」
銀時は凄みのある声で一喝した。
新八も神楽も身体をビクッと震わせたほど迫力があったらしい。
「そのあと、僕も神楽ちゃんも動けなくなってしまいました。でも、銀さんはどんどん歩いていっちゃって、遠くなって、だから、僕たちは銀さんに呼びかけたんですが、立ち止まってもらえませんでした」
新八は重々しく少し悲しげな表情で話した。
その隣で、神楽がうつむいたまま、ずずっと鼻を鳴らした。
「僕たちのなにが悪かったんでしょうか。なんで銀さんはあそこまで怒ったんでしょうか。神楽ちゃんとふたりで考えたんですがわからなくて、銀さんとつき合いの長い桂さんならもしかしてわかるんじゃないかって思って、ここに来ました」
「ヅラぁ」
神楽が顔をあげた。
その眼は潤み、鼻は赤く染まり、頬は涙で濡れている。
「私どうしたらいいアル? どうしたら銀ちゃんにゆるしてもらえるアルカ?」
いつもの強気な様子はどこにもなく、すがるように聞いてきた。
なんとかしてやりたいと桂は思った。
新八の話を聞いていて、推測にしかすぎないが、銀時が解雇を宣告したわけがわかったような気がした。
爆弾が新八と神楽に向かって投げられ、爆発後、瓦礫の下でふたりは意識を失っていた。
ふたりとも死んだように見えただろう。
それを見て、銀時はどう思っただろうか。
桂は想像して、心にずしりと重く来るものを感じた。
ただでさえ、銀時は戦の夢を見て、それがずいぶんとこたえていたらしく、精神的に不安定な状態にあったのだ。
夢などというと軽いもののようだが、あれについては現実にあったことであり、その記憶がよみがえったという重いものである。
月日が経っても、年単位で時が過ぎても、ふとした拍子に、あまりにも鮮明に記憶がよみがえってきて、その記憶にさいなまれて自ら命を絶った者もいるし、酒におぼれて転落していった者もいた。
彼らが弱いとは思わない。
あの記憶が強烈すぎたのだ。
彼らについて、桂は後悔している。
似たような記憶を持つ者として、彼らがああなるまえに助けることはできなかっただろうかと、悔やんでいる。
そして、もし銀時が、と想像して、ゾッとした。
ありえないことではない。
人一倍責任感の強い銀時は、戦の恐怖を感じるだけではなく、仲間を護れなかった自分をひどく責めているに違いない。