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ゆらのと

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「冗談で言えるか、あんなこと」
少し腹を立てて、言い返した。
すると、銀時はなにも言わずに腕をおろした。
桂はふたたび歩きだし、銀時から離れる。
応接間兼居間を出て、玄関のほうに行く。
土間へとおりるまえに立ち止まった。
このままの姿で外に出るわけにはいかない。
銀時に押し開かれた襟をしっかりと合わせ、少しゆるんでいた帯を直し、長い髪が乱れているのを整える。
それらが終わると、草履を引っかけて土間を進み、戸のまえで足を止めた。
戸を開けて、外に出る。
ほっとした。
だが、すべてが終わったわけではない。
むしろ、これからだ。
ほんの少しだけ先延ばしにしただけにすぎない。
今夜のことを考えると、気が重くなった。
だが、もう後もどりはできないし、今それを気に病んでもしかたがないだろう。
深く考えるのはやめて、桂は階段をおりた。

夜が更けてゆく。
寒いな、と桂は思った。
夕飯を食べ、風呂に入り、そして、現在、居間で茶を飲んだりしながら時間をもてあましている。
書物を開いてもみたが、どうにも集中できず、早い段階で読むのをやめてしまった。
銀時が来ない。
もう深夜であるのに。
あたりは静かで、時計の針の刻む堅い音が耳障りなぐらいに響いている。
もしかして銀時は来ないのかもしれない。
ふと、そう思った。
桂が望んでいないことを、銀時はよくわかっているはずだ。
だから、桂の望まないことはせず、新八や神楽と仲直りするつもりなのかもしれない。
希望的観測すぎるだろうか。
しかし、こんなに遅い時刻になっても来ないのだ。
いつまでもこんなふうに待っているのは嫌で、とりあえず、机の上の湯飲みを片づけることにする。
湯飲みを台所に持って行った。
片づけ終わっても、まだ銀時は来ない。
寝よう。
そう決めた。
寝室として使っている部屋に行き、布団を敷いた。
本当に来ないのだろうか。
一瞬ためらったのち、部屋の灯りを消した。
布団に入る。
少しも眠くはなかったが、まぶたを閉じる。
そのままで、しばらく時間が過ぎた。
眠れない。
それどころか、やけに頭が冴えている。
眼を開けた。
いっそ起きようかと思った。
だが、起きたところでなにもすることはない。
寒いだけだ。
結局、また眼を閉じた。
そのとき。
戸を何度も叩く音がして、夜の静寂が破られた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio