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ゆらのと

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廊下を歩いている途中、少し先を行く桂をつかまえ、その背中を胸に引き寄せる。
風呂からあがってまだ時間がたいして経っていないらしく、長い黒髪は湿っていた。
その身体から立ちのぼってくる優しい香りが鼻孔をくすぐる。
思わず、強く抱きしめる。
香りとともに体温がいっそう伝わってきて、冷えきった身体の強張りが溶けていくのを感じた。
「……茶を淹れようか」
「いらねェ」
「風呂に入るか」
「……ああ」
すると、桂は腕の中で動いた。
身体をまえへと進め、自分をとらえている腕を押しやろうとする。
銀時は桂を放した。
ふたりで風呂場のほうへ行く。
脱衣所で銀時が着ているものを脱いでいると、桂はタオルと着替えを持ってきた。
それを見て、冗談のように軽く言う。
「なァ、一緒に入らねェか」
桂は一瞬眼を丸くしたが、すぐにその眼を伏せた。
「いや、俺はもう入ったから」
そんなの見りゃわかるけど。
そう思ったものの、言わずにおく。
わかっていて、あえて言ってみた。
もっとも、断られることを予想していたが。
だから気にならない。
タオルと着替えのほうに手をやる。
それに気づいた桂はそれらを受け取りやすいように差しだした。
銀時は桂のほうに身体をぐっと近づける。
「茶とかいらねーから、寝床で待っててくれ」
あっさりとした口調で告げた。
桂は返事しない。
その手からタオルと着替えを取る。
なにも言わないまま、桂は脱衣所から出て行った。
そのあと、銀時は風呂に入った。
風呂からあがり、脱衣所からも出ると、タオルで癖毛頭を無造作に拭きながら寝室のほうへ向かう。
気温はここに来たときよりも下がり、廊下も冷えていたが、湯につかって身体の芯まで温まったおかげで平気だった。
寝室に足を踏み入れる。
桂が布団から身体を起こし、そこに正座した。
堅苦しいな、と思う。
銀時は桂の近くまで行くと、その正面にあぐらをかいた。
じっと顔を見る。
桂の堅い表情は崩れない。
その顔のほうに手をやる。
手のひらを頬に押しあて、それをさらに首へと落とし、うなじをなでて、きものと肩のあいだに差し入れる。
身体は自然とまえに動いていた。
「銀時」
至近距離で桂は言う。
「ちょっと待て」
だが、無視して、やわらかな唇に自分のそれを重ねようとした。
「待てと言っている……!」
桂は顔をゆがめ、銀時の身体を押しもどした。
力勝負なら自信はあるが、無理強いはしたくないので退くことにする。
しかし、これからするつもりだったことをやめる気はない。
「すげェ痛いんだろ。それが嫌なんだろ」
つい声がきつくなった。
「だが、すまねェが、俺ァ、慣れてくれとしか言えねェ」
ひどいことを言っていると思う。
けれど、今さら元の関係にもどせない、もどしたくなかった。
「そうじゃない」
桂は否定する。
「そういうことではないんだ」
その眼は真っ直ぐに銀時を見ていた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio