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ゆらのと

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歩いているうちに、通い慣れた住宅街にたどりつく。
しばらくして、進む先に見慣れた後ろ姿を見つけ、銀時は立ち止まった。
桂が道に腰をおろしている。
さらにその先には猫がいた。
猫は警戒している様子で桂のほうを見ている。
こんな光景を過去に何回か見たことがあった。
銀時の頭に、その光景がいくつか浮かんでは消えていった。
軽くため息をつく。
まったく、アイツは。
首筋をボリボリとかいた。
それから、桂のほうに近づいていく。
その横まで行くと、足を止めた。
桂を見おろす。
案の定、桂の手には煮干しがあった。
「……また餌づけしようとしてんのか」
「ああ」
桂は銀時のほうを見ずにきっぱりと答えた。
その眼は猫のほうに向けられている。
真剣な表情だ。
だが、真剣であればあるほど、こちらはあきれてしまう。
「あのな、アイツは野良だ、警戒心が強いんだ。そんなもんにつられて、テメーに肉球をさわらせたりなんかしねーよ」
「煮干しではダメだというのか。ならば、何であればいいんだ」
「いや、そーゆー問題じゃ……」
「そうだ、鰹節だ。猫に鰹節と言うぐらいだからな」
「いや、だから、そーゆー問題じゃねェっての。煮干しだろーが鰹節だろーが、テメーとアイツとの距離はこれ以上は縮まらねェよ」
「それは試してみなければわからん」
「じゃあ、あれだけ警戒してるヤツが、鰹節を見せたとたん、手のひら返してテメーに甘えてくる姿、想像してみろ」
「……」
桂は黙りこんだ。
想像できなかったらしい。
肩を落とし、煮干しを道に置いた。
そして、立ちあがる。
気落ちした様子のまま、門のほうへ行き、門を通りすぎると、玄関のほうへ進んだ。
銀時はついていく。
家の中に入った。
「……茶を淹れる」
そう告げて、桂は台所のほうに去った。
銀時は居間に向かう。
居間に足を踏み入れると、机のまえに座った。
しばらくして、桂が居間にやってきた。
その手には盆があり、その盆には湯飲みがふたつ乗っている。
桂はその片方を銀時のまえにコトッと置いた。
ほぼ銀時用となっている湯飲みだ。
置いたあと、桂は湯飲みがひとつ乗った盆を持って、机のまわりを半周し、銀時の向かいに腰をおろした。
銀時は自分用の湯飲みを持って立ちあがる。
机のまわりを半周し、桂の湯飲みの近くに自分用の湯飲みを置くと、正座している桂の隣に無造作に腰をおろした。
桂がこちらのほうを見る。
少し緊張したのが伝わってきた。
けれども、桂はなにも言わず、眼をそらした。
何事もなかったかのように湯飲みを手にする。
銀時もそうした。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio