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ゆらのと

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手が伸びてきて、その指が頬に触れる。
頬を優しくなでる。
その指先から伝わってくるものがあって、困る。
だが、困るというのは嫌だということではない。
銀時は身を乗りだし、近づいてきた。
そして、告げる。
「無事に帰ってきてくれ」
そっとささやくような声だった。
声から温もりを感じる。
けれど。
桂は自分の頬に触れている銀時の手をつかんだ。
その手をゆっくりと頬から離す。
銀時は手をおろした。
じっと見ている銀時の眼を見返して、桂は言う。
「約束はできない」
無事に帰ってくると返事できればいい。
だが、そんなこと、できるはずがない。
「それに今回は無事に帰ってこられたとしても、次はどうなるかわからん」
こんな話を今しなくてもいいのかもしれない。
しかし、どうしても言っておきたくなった。
「どうなるかわからなくても、俺は戦いに行く。そうしなければならないと思うからだ。天人を全員この国から追い出さなければならないということじゃない。幕府の中枢に入りこんだ天人がこの国を自分たちにとって都合のいいように変えようとしているから、それを止めなければならないと思っている。彼らはこの国を食い物にしている。食い物にして、やがて食いつくしてしまうかもしれない。この国が滅びても、彼らには帰るところがあるのだからな」
まるで訴えているようだと自分でも感じる。
「俺は、ふるさとが、この国が食い物にされているのを放っておけない。だから、戦う。たとえ命を賭けることになっても、だ」
わかってほしいと訴えているみたいだ。
黙っている銀時を見て、その口が開くのを待つ。
だが、銀時はなにも言わず、ふたたび手を伸ばしてきた。
その手が頬に触れる。
だから、その手をつかんで頬から離そうとした。
けれども、銀時のほうが力が強い。
顔が寄せられてくる。
「銀時」
こういうことではなく、話がしたい。
そう思ったが、口をふさがれる。
唇を押しつけられる。
もう何度目なのかわからない、何度もしてきた行為だ。
何度もするうちに、よくわかった。
銀時はうまい。
少々腹立たしい気もするが、認めざるをえない。
自分は男で相手も男だという意識が、頭から消える。
身体が熱くなる。
気がつけば、口で息をしていた。
銀時の腕が身体にまわされる。
ハッとした。
「ちょっと散歩に行ってくると言って出てきたんだろう、おまえ」
押し倒そうとしているのがわかって、あらがう。
銀時の帰りが遅くなれば、あのふたりは心配するだろう。
「ここまできたら、今すぐ帰ろうが、もっと遅くなろうが一緒だ」
ぶっきらぼうに銀時は言った。
そして、強引に畳へと押し倒す。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio