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ゆらのと

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失敗の可能性を否定することはできない。
そして、もし失敗すれば。
捕らえられて真選組に引き渡される、あるいは、殺される。
自分はまだ死にたくはないし、自分は助かったとしても仲間が死ぬところを見たくない。
見たくはないが、これまで何度も見てきた。
それを思い出す。
胸が引き裂かれるように痛む。
攘夷党の党首として仲間を率いる身でありながら、不安になり、心が揺れている。
強くあらなければならないと思うのに、動揺してしまっている。
ふと。
無事に帰ってきてくれ。
そう告げた銀時の声が耳によみがってきた。
おとついのことだ。
あのあと銀時に打ちこまれた体内の熱はとおに消えている。
けれど、その手が触れたのを肌が思い出した。
まるで今も触れられているように、感じる。
掌中の珠のような存在だと言われた。
気恥ずかしくて戸惑ってしまう表現だ。
しかし、妙に納得してしまう。
その無骨な手はいつも慈しむように肌をなでる。
大切に想われていることを感じる。
大切に、大切に、護られていることを感じる。
護られるのは性に合わない。
いつもならそう反発するのに、不思議なことに自然に受け入れられる。
護られていることを感じて、心が穏やかになる。
安心する。
大丈夫だ。
そう思う。
心の揺れは収まっている。
不安は消え、胸には強い決意だけが残っていた。
顎をあげ、前方にある屋敷を見すえる。
そして、ついに予定していた時刻となり、屋敷の門が中から開けられた。

戸がガタガタと鳴った。
外で風が吹き荒れているのだ。
天気予報が伝えていたとおり、今日は天候が崩れた。
雨こそ降らなかったものの、終日、空は厚い灰色の雲に覆われ、冷たい風が強く吹いていた。
夜になり、風はいっそうひどくなった。
獣の咆哮にも似た風の音を、桂は寝室で聞いていた。
部屋の灯りを消し、布団に入ったばかりである。
この家でこうして布団に寝ていることをありがたく感じる。
昨夜の攘夷活動は大成功といっていい結果となった。
屋敷内の警備は想定内で難なく突破することができ、悪事の証拠は期待していた以上に得られ、さらに標的の天人は少し脅すとあっけないぐらいペラペラと白状した。
今日、報道機関はこの事件を大きく取りあげた。
こうなれば、いくら幕府の要人であっても逃れられないだろう。
ただし、逮捕されて裁かれるかどうかはわからない。
権力を徹底的に行使し、故郷の星へ帰ってしまうかもしれない。
しかし、幕府の要人という立場を失うことはほぼ間違いないし、悪事を暴くことができたので、とりあえずは満足だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio