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ゆらのと

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思わず手に力が入り、封筒をグシャッと握りつぶす。
その感触に、ハッとする。
封筒にまだなにか入っているように感じた。
中を確認すると、紙が一枚入っていた。
取り出す。
写真だ。
それを見て、眉間にしわを寄せる。
写っているのは、桂の家だった。

風が氷の粒でも含んでいるかのようにひどく冷たい。
銀時は夜の町を歩いていた。
通い慣れた道である。
桂の家に向かっているところだ。
歩き続けるうちに、体温が容赦なく奪われ、身体に冷気が宿っていくのを感じる。
耳がひどく冷たくて痛いぐらいだ。
やがて、桂の家が見えてきた。
灯りがついている。
まだ起きているらしい。
冷たい風の吹く中、少しほっとした。
門を通りすぎ、玄関の戸のまえで立ち止まった。
鍵を取り出す。
手はすっかりかじかんでいた。
戸を開けて、中に入る。
自分の家のようにどんどん進んでいく。
居間に行き着くまえに、桂がやってきた。
その顔を見て、心がなごむ。
だが、頬はゆるまない。
体温を奪われた身体は、まだ強張っている。
桂は足を止めた。
「くると思わなかった。外で会ったときに、今夜くると言ってなかっただろ、おまえ」
非難しているわけではなさそうだった。
今日の午前に会ったときに今夜のこの来訪についてまったく言ってなかったから、ただ少し驚いている、といった様子だ。
距離をつめる。
そして、その身体を腕の中におさめ、抱きしめる。
温かい。
その温もりが強張った身体にじんとしみた。
凍りついていたのが溶けていくのを感じる。
「なにかあったのか」
桂が問いかけてきた。
その声は真剣味を帯びていた。
だから。
「なんにもねーよ。会いたくなったから会いにきただけだ」
否定した。
しかし、なにもないというのは嘘だ。
差出人不明の手紙のことが頭にあったから、ここに来た。
桂のほうにも似たような内容の手紙が届いているのかどうかを知りたくて、様子を見にきたのだ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio