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ゆらのと

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前回の手紙が届いてから十日以上すぎていている。
だが、自分は桂と別れていないし、あの手紙の存在を他のだれかに知らせてもいない。
手紙の封を切る。
中には、前回と同じく、便せんと写真がそれぞれ一枚ずつ入っていた。
内容を見て、つい表情が険しくなった。
「……銀さん、だれからの手紙なんですか」
異変を察知したらしい新八が聞いてきた。
銀時は表情をゆるめ、軽く答える。
「ああ、ついうっかり差出人の名を書き忘れるよーな、間抜けなヤローだ。またくだらねェこと言ってきやがった」
鼻で笑って、便せんと写真を封筒の中にもどす。
実物は眼のまえからなくなったが、その文面は脳裏に刻みこまれている。
桂小太郎と別れなければ、身近にいる者の身に危害が及ぶだろう。
便せんには、そう書かれていた。
そして、写真には、遠くから撮影されたらしい新八と神楽の姿があった。

見おろしている先に、整った顔がある。
切れ長の眼のまぶたを縁取る睫毛は長く、鼻筋は綺麗に通っていて、唇は優美な曲線を描いている。
肌は雪のように白い。
しかし、布団の上に広がる長い髪は艶やかな黒だ。
その髪を一房、指にからめとる。
しっとりとしている。
髪を放した。
細い顎に触れて、少し上げさせる。
そちらのほうへと上体を落として、顔を近づけてゆく。
ふと、下で、その整った顔の口元がほころび、睫毛が揺れた。
微笑んでいる。
照れているような、それでいて、満ち足りているような笑みだ。
その笑みに引き寄せられて、顔を近づけ、唇を重ねる。
受け止めた唇からはしっかりと反応があった。
手を、きものの襟へとやって、それをつかんで開き、その下にあった肌に押しあてる。
よく知っている身体だ。
今はまだつぼみのような状態で、これから自分がその何枚も重なった花びらを開かせてゆく。
そうするつもり、だった。
だが、ふいに、頭に別のことが浮かんだ。
思い出した。
それを頭から追い出そうとする。
今はそれを考える時じゃない。
そう思った。
けれど、頭から離れない。
今こうしているのとは、まったく無関係のことではないから。
差出人不明の手紙のことを思い出していた。
特に二通目の文面が脳裏にはっきりとよみがえっていた。
別れなければ新八と神楽に危害を加えると、暗に脅していた。
おそらく、相手は、銀時がかつて白夜叉と呼ばれていたことを知っているのだろう。
そして、銀時ひとりに対して大勢であろうが、こちらの得物が木刀で相手の得物が真剣であろうが、返り討ちにされる可能性が高いと見ているのだろう。
だから、銀時本人ではなく、その近くにいる者をねらうことにしたのだろう。
卑怯だ。
そんな相手の脅しに屈したくない。
しかし、そう思うものの、新八と神楽のことを考えると不安になる。
「……銀時?」
「あー、今日は、なんか、ちょっと疲れてるみてェだ」
いぶかしげに呼びかけてきた桂のほうを見ずに、銀時は言う。
「今夜はこのまま寝ちまってもいいか」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio