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ゆらのと

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ついさっきまでの感情の昂ぶりが嘘のように、気分が沈んでしまっている。
今夜はもう盛りあがりそうにない。
「俺は、別に、かまわんが……」
困惑したように桂が言った。
しかし、そう返事するしかないだろうと銀時は思う。
それを見越した上であえて聞いたことを、申し訳なく感じる。
だが、謝るのもまた申し訳ないような気がして、なにも言わずに桂の身体の上から退いた。
あぐらをかき、首筋に手をやる。
桂も身体を起こした。
畳に落ちている腰紐を拾い、うつむいて乱れた着衣を直している。
その姿がなんだか艶めかしくて、胸に小さな火がついたように感じたが、それは次の瞬間には消えていた。
桂の手が止まるのを待ち、告げる。
「灯り、消すぞ」
「ああ」
立ちあがり、部屋の灯りを消す。
あたりは暗くなった。
けれども、眼はすぐにその闇に慣れる。
布団に寝ころんだ。
まぶたを閉じる。
「銀時」
桂が話しかけてくる。
「なにかあったのか」
眼を開けた。
桂はすぐ近くで正座していた。
少しまえかがみになって、こちらのほうをじっと見ている。
長い黒髪が肩のまえに流れ落ちている。
「……なんにもねーよ」
素っ気なく答え、眼をそらした。
「それより早く寝ようぜ」
話を打ち切りたかった。
しかし、桂が動く気配はない。
正座したままなのだろう。
「銀時、もし胸になにか重いものを抱えているのなら、それを話してほしい」
桂は言う。
「おまえの力になりたいんだ」
その声は穏やかで、耳にやわらかく下りてくる。
「それができないなら、そばにいる意味がない」
ああ。
本当にこいつはタチが悪い。
そう思った。
口説くつもりではなく、殺し文句を口にするのだから。
桂のほうを身体ごと向く。
その顔を見る。
「そばにいてくれるだけで充分だ」
本音だ。
腕をあげて伸ばし、正座している膝の上にある手に触れる。
桂の表情が揺れた。
少し困っているようにも見える。
つい、軽く笑った。
それから、身体を起こし、掛け布団をつかんだ。
「寝るぞ」
掛け布団を身体の上へ引き寄せる。
桂は正座したままでいたが、やがて足を崩した。
隣に、入ってくる。
同じ布団の中にいて、すぐそばにいて、その温もりをよく感じる。
いとしいと思う。
こんなふうに、ここまで想う相手は、たったひとりだ。

「疲れたアル〜」
神楽が文句を言った。
仕事の帰りだ。
かぶき町の道を銀時は新八と神楽とともに歩いていた。
太陽は西の果てへと沈もうとしていて、橙色の強い光を放っている。
「あれ、なんか、うちのほうに人だかりができてませんか」
新八が言った。
うちとは新八の家ではなく万事屋のことだ。
その言うとおり、帰ろうとしている方向に人が大勢いる。
「ホントだ!」
興味がわいたらしく、神楽の足取りは途端に軽く速くなった。
一体ェ何事だ、と思いながら、銀時は歩き続ける。
人だかりに近づく。
人々の視線は万事屋のほうに向けられている。
そして、何事なのかが、わかった。
二階家の二階、万事屋が半壊している。
爆破されたように見えた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio