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ゆらのと

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「なんでこんな……」
隣で新八がうめくように言った。
その声を聞いて、銀時は我に返る。それまで、ただ、ぼうぜんと二階を見あげていたのだった。
銀時は歩きだす。
人と人の合間を縫うようにして進む。
家の様子を見に行こうと思った。
新八と神楽もついてくる。
万事屋へと続く階段の近くまできたとき、その階段の上に男があらわれた。
黒い真選組の制服を着て、口には煙草をくわえている。
真選組の副長、土方十四郎だ。
もちろんこちらに気づいただろうが、表情をまったく変えず、ゆっくりと階段をおりてくる。
銀時は立ち止まり、土方を見すえた。
それでも土方は平然としている。
「……やっと家主が帰ってきたか」
階段をおりきると、土方は足を止めて言う。
「いや、おまえは借りてるだけだから家主じゃねェか」
顔立ちは端正だが、眼つきは悪い。
その眼でジロリと銀時を見た。
立っている姿に隙はない。
身体から発する気は鋭く、刀の刃を思わせる。
鬼の副長と恐れられるほどの、剣の遣い手だ。
銀時は土方と真剣で立ち合い、勝ったことがある。
新八の姉のお妙に惚れてつきまとっている真選組局長の近藤勲と決闘することになり、銀時は丸くおさめるためにわざと汚い手を使って勝った。
すると、それを知った土方が勝負を挑んできた。
銀時は勝負を受ける気はなかったが、土方が問答無用で斬りつけてきた。
その際に、肩を斬られた。
しょうがないので、土方から押しつけられた真剣を抜き、相手をした。
ふたたび斬りつけてきた土方の刀を、真剣で打ちすえて、折った。
それで決着がついた。
しかし、だからといって土方が自分よりも弱いとは思わない。
今もこうして向かい合って立っていると、好敵手を眼のまえにしているような感覚がある。
あたりの空気が張りつめている。
「ああ、俺ァ、ただの店子だ」
銀時は軽い口調で言い返す。
「で、俺の借りてるところに、いったいなにが起きたんだ?」
「何者かが時限爆弾を送りつけたみてェだ。それが爆発して、あんな状態だ」
土方は右手の親指を立て、背後を差した。
その先にあるのは階段の上。
半壊状態の万事屋だ。
「一階でスナックをやってる大家の話によると、爆発する少しまえに郵便配達員が二階にあがっていったらしい。それで、うちの者に確認させたら、たしかに郵便配達員はそのぐらいの時刻におまえ宛の小包を持って二階に行き、郵便受けにその小包を入れたそうだ。現場の状態からも、郵便受けで爆発したように見える」
郵便と聞いて、銀時は眼を細めた。
頭に、あの二通の手紙の文面が浮かんだ。
だが、口は閉ざしたままでいた。
土方はじっと観察するような眼で見ている。
「それで、てめーには、爆弾を送りつけられる心あたりはあるのか?」
そう聞いてきた。
「ねーよ、そんなもん」
即座に否定し、銀時は鼻で笑う。
「俺ァ、善良な市民だからなァ」
「旦那が善良な市民なら、世の中のほとんどが善良な市民ですぜ」
うしろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio