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ゆらのと

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一応、そちらのほうを振り返る。
そこには、真選組一番隊の隊長、沖田総悟が立っていた。
容姿は美少年と言っていいだろう。
しかし、戦闘面では真選組随一の腕前を誇っている。
神楽が顔をしかめた。
それに沖田が気づく。
「だが、世の中のほとんどが善良な市民でも、てめーはその中には入らねーな」
「なんだと、コラァッ」
神楽は沖田に詰め寄り、その胸ぐらをつかんだ。
ふたりは犬猿の仲である。
「オイ」
そんなふたりを無視して、土方が声をかけてきた。
「本当に心あたりがねェんだろうな」
「ねェよ」
銀時は素っ気なく言い返した。
頭にはさっきからずっと二通の手紙の記憶があったが、攘夷党の党首にして指名手配犯の桂が深く関わっているのだから、それについては言えるわけがない。
「てめーのことなんざ、心配したくねェが、一応、言っておいてやる」
土方は話を続ける。
「自分たちが無傷だからって、事態を甘く見ないほうかいい。もしも、時限爆弾に設定した時刻におまえたちがいて、郵便受けから出して、それが爆弾には見えないようなヤツで、自分たちの近くに置いていたら、全員そろってあの世ゆきとまではいかなくても、大けがしてたかもしれねェ。今回は不幸中の幸いだったんだ」
そんなこと言われなくたってわかってる。
そう銀時は苦々しく思った。

闇に白いものがひらひらと舞った。
雪だ。
雪が降ってきたのだ。
そういえば夜になると急激に寒さが強まって雪が降るかもしれないと天気予報が伝えていたことを思い出した。
銀時は吹く風の冷たさに身を堅くしながら歩く。
通い慣れた道だ。
天から降ってくる雪の量は徐々に増える。
街頭の下では、その光に照らされて、まるで舞台で降りしきる紙吹雪のように見えた。そこだけ現実から切り離されているように見えた。
それにしても、寒い。
寒い、寒い、と思いつつ、ときおり身を震わせながら、歩き続ける。
身体の中に冷気が蓄積されてゆくのを感じる。
そして、ようやく、目的地に着いた。
桂の家の灯りはついている。
いつものように合鍵を使って、家の中に入る。
廊下を進んでいると、桂がやってきた。
「銀時」
その表情は曇っている。
「万事屋が爆破されたらしいな」
桂は情報通であるし、それに同じかぶき町に住んでいるのだから、知っていて当然だ。
「……ああ」
眼をそらして、返事をした。
足を止めている桂の横を通り過ぎ、居間へと向かう。
家の中にいるものの、身体の中の冷気はまだまだ残っている。
居間に到着する。
机の上には湯飲みが置いてあり、さっきまでここで桂がすごしていたのを感じる。
銀時は畳にドサッと無造作に腰をおろした。
あぐらをかく。
そのあいだに、桂が近くまでやってきた。
いつものように正座して、生真面目な顔を向ける。
「銀時、万事屋が爆破されたことについて、おまえはなにか知っているのか」
「……」
話したくない。
けれど。
「……そのことで、話がある」
もう話さないままではいられない。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio