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ゆらのと

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桂の切れ長の眼が大きく開かれる。その黒い瞳は鋭い。
「状況をよくわかっているのか。嫌だとか、そういうことで決めていい問題ではないはずだ」
重い声で桂は言った。
その上から押さえつけるような口調に、銀時は反発する。
「嫌なことを嫌だって言って、なにが悪い。だいたい、なんで、こんなことをしてくるヤツの言うとおりになんざ、しなけりゃならねェんだ。自分は安全な場所にいて、名乗ることすらしねェくせに、えらそうに脅してきやがる。そんなヤツの脅しに、テメーは屈するってのか」
強く、問う。
腹がたっていた。
もちろん手紙を送ってきた者に対してだが、つい、桂に向かって発した声に怒りがまじった。
桂は口をきつく閉ざした。
反論できないようだ。
それはおそらく同じ気持ちだからだろう。
手紙の送り主は、正体を隠し、被害が自分に跳ね返ってこないところから、一方的に要求してくる。
臆病で、卑怯だ。
正々堂々と向かってくる者に負けを認めるのはまだマシだが、こんなふうに脅してくるヤツの言うとおりにするのは屈辱以外の何物でもない。
そいつが言いなりになったと喜ぶ姿を想像すると、虫酸が走る。
自分の中の誇りが傷つく。
「……だが、たとえどんなに口惜しくても」
桂が低い声でしぼり出すように言う。
「そうしなければならない場合もある」
それを聞いて、銀時は鼻で軽く笑う。
「この御時世に幕府に盾突いて攘夷活動してるヤツが言うことじゃねーだろ」
しかし、桂は挑発には乗らない。
「万事屋が爆破されたんだ。そのせいで負傷した者はいなかったようだが、それはたまたまそうだっただけで、もしかすると重傷を負う者がいたかもしれないし、命を奪われる者がいたかもしれない」
「だが、手紙を送ってきたヤツと、爆弾を送りつけてきたヤツが同じとは限らねェ」
「それぞれが送られてきた時期からして、同じ人物の仕業だと考えるのが妥当だろう。それに、おまえもそう考えたからこそ、今になって、この手紙を俺に見せたんだろうが」
銀時がなにを言っても、桂は冷静に言い返してくる。
そして、その言葉は正しい。
その正しさに、その冷静さに、イラだちを覚える。
「じゃあ、オメーはそれでいいのか。正体隠してる臆病者のくせに、えらそうに脅してくるヤツに、家を爆破されたからって、言いなりになるのかよ。それで、テメーはいいのか」
「だから、調べると言っている」
「なら、調べて、だれがやったかつきとめるだけで充分だろ。別れる必要はねェ」
「いや、必要はある。ヤツはおまえの身近にいる者たちを狙うと予告し、それを実行した。本気だということだ。言いなりになるのは腹立たしいが、別れなければ、また狙ってくるだろう。そして、そのときもまた幸運なことに無事でいられるとは限らん」
「なんでそんなに冷静なんだよ……!」
イラだちが強くなり、その荒れた感情を桂にぶつける。
「冷静な判断なんざ、聞きたかねェんだ」
腕をあげる。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio